をば(読み)ヲバ

デジタル大辞泉 「をば」の意味・読み・例文・類語

を‐ば

[連語]格助詞「を」に係助詞「は」が付いたものの音変化》動作作用対象を、特に取り立てて強調する意を表す。(特に)…を。「優勝をば逸した」
「外の女―ことごとく嫌うと見ゆれば」〈鴎外訳・即興詩人
其実そのじつ母も民子―非常に可愛がって居るのだから」〈左千夫野菊の墓
「名―、さかきみやつことなむいひける」〈竹取

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「をば」の意味・読み・例文・類語

を‐ば

  1. [ 1 ] ( 格助詞「を」に係助詞「は」が付き、「は」が濁音化したもの ) 動作の対象を強調する。→補注。
    1. [初出の実例]「秋山の 木の葉を見ては 黄葉(もみち)乎婆(ヲバ) 取りてそしのふ 青き乎者(ヲば) 置きてそ歎く」(出典:万葉集(8C後)一・一六)
    2. 「其比都に白拍子二人あり、姉をは義王妹をは義女とぞ申ける」(出典:延慶本平家(1309‐10)一本)
    3. 「頻りに小言を云ふけれど、其実母も民子をば非常に可愛がって居るのだから、一向に小言がきかない」(出典:野菊の墓(1906)〈伊藤左千夫〉)
  2. [ 2 ]をは

をばの補助注記

現代語ではほとんど見られず、動作の対象を強調する場合には、「喉の話はもう止めます」〔蓼喰ふ虫谷崎潤一郎〉六〕のように「は」だけを用いるのが普通である。ただし、方言として残っている地方もある。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android