アウトゥールゴイ(英語表記)autourgoi

改訂新版 世界大百科事典 「アウトゥールゴイ」の意味・わかりやすい解説

アウトゥールゴイ
autourgoi

〈自ら働く者〉を意味した古代ギリシア語。主として農耕牧畜に従事する独立自営の農民について用いられた。前4世紀アテナイの著述家クセノフォンは,《家政論》のなかで,農業に従事する人々をアウトゥールゴイと〈監督によって農業を行う者〉に分類しているが,前者が家族および少数の奴隷とともに自ら労働したのに対して,後者は自ら働くことなく多数の奴隷を使役して農業を行わせた。前7世紀初頭にまとめられた叙事詩人ヘシオドスの《農と暦(仕事と日々)》のなかには,アウトゥールゴイの姿がすでに明確に描き出されている。これらの農民は,前7世紀後半から前6世紀にかけて奴隷への転落の危機にみまわれたが,市民団の再建を断行したソロンの改革後のアテナイにみられるように,重装歩兵戦術の発展とともに民主政ポリスへの変革の道を切り開いた。しかしこの過程は同時に,アウトゥールゴイの単婚小家族内部に深く奴隷制が浸透していく過程でもあった。前5~前4世紀のアテナイでは,手工業・鉱山業などの分野で奴隷の大量使役がみられたが,中小の土地所有の広範な存続ともあいまって,農業においては小家族内部での少数の奴隷所有がその特徴をなす。民主政ポリスへの発展には,アウトゥールゴイが政治軍事へ専念することが必要条件であったが,それを可能にしたものこそ,農業生産における補助労働力としてのこうした奴隷の存在であった。
奴隷
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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