改訂新版 世界大百科事典 「アサガオガイ」の意味・わかりやすい解説
アサガオガイ
Janthina janthina
浮遊性のアサガオガイ科の巻貝。殻は薄くもろく,淡紫色,下側は平らで紫色。この色が朝顔の花を思わせるので名付けられた。高さ4.0cm,太さ3.5cmくらいになり,巻数は4で低円錐形。殻口は広い。軟体も紫色で足を上にして,足から泡状の多くの浮袋を出して浮き,殻は逆さにぶら下がったようになる。殻口をふさぐふたはない。雌雄同体だが小さいときは雄性が,大きくなると雌性が現れる雄性先熟で,卵胎生。世界の温・熱帯の海に広く分布し,海流とともに群をなして浮遊し,強い風のあとに海岸に多数打ち上げられることがある。ギンカクラゲなどのクダクラゲ類を食べ,アオミノウミウシに食われる。近縁のルリガイVioletta prolongata(=Janthina globosa)はこの種に似るが,球状の殻をもつ。卵生で足から分泌した浮袋の下に卵囊を多く産みつける。ほかにヒメルリガイ,ヒルガオガイなどの近縁種がある。
執筆者:波部 忠重
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報