改訂新版 世界大百科事典 「アサバスカ川」の意味・わかりやすい解説
アサバスカ[川]
Athabasca River
カナダ西部,アルバータ州の川。長さ1220km。マッケンジー川水系の上流部にある支流の一つで,カナディアン・ロッキー山脈のジャスパー国立公園内に発し,ほぼ北東流してアサバスカ湖に流入している。流域南部にカナダ・プレーリー地方北西端の小麦地帯があるが,北部は主として森林または原野となっている。下流域には世界最大級のオイルサンド地域があり,開発が進められている。
執筆者:正井 泰夫
アサバスカ・タールサンド
アサバスカ川下流域には,オイルサンド(タールサンド)鉱床として知られる地層が発達している。黒褐色で粘稠な,重質の炭化水素油(ビチューメンbitumen)を含む砂層(厚さは平均五十数m)で,深さ0~300mの所に面積2万5000km2にもわたって存在している。その処理には技術的にいろいろと困難な点があって十分な開発はなされていないが,一部で企業化され,この砂層を露天掘りで採掘し,湯で温めてビチューメンを抽出し,石油と同じように処理している。この地層に含まれる石油分の総量は,現在知られている中東の石油埋蔵量に匹敵すると見積もられている。1980年代に,州の北部からさらに北の北部準州にかけての地域に多数のウラン鉱床が発見され,すでにいくつもの鉱山でウランの生産が行われ,世界の重要なウラン生産地となった。
執筆者:山口 梅太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報