翻訳|oil sand
油砂,タールサンドtar sandともいい,通常の原油採取すなわち流動採取による方法では採収できない重質油を含む砂あるいは砂岩をさす。オイルサンド鉱床に含まれる油の原始埋蔵量は,約2兆バレルの規模といわれる。そのほとんどを占めるカナダ西部(44%)およびベネズエラ東部(50%)のオイルサンド鉱床は,それぞれ単独で中東の全油田の原始埋蔵量に匹敵する大きさである。東部ベネズエラのオリノコ・ヘビーオイルベルトでは,1.2兆バレル(1バレル=0.159kl)の原始埋蔵量に対し,2700億~2966億バレルの可採鉱量があるといわれている。カナダのアルバータ州には9000億バレル以上のオイルサンドが埋蔵されており,主としてアサバスカ鉱床(6250億バレル),コールドレーク鉱床(1640億バレル),ワバスカ鉱床(530億バレル),ピースリバー鉱床(500億バレル)の4地域に分布している。このうち,アサバスカ鉱床は,独立の炭化水素鉱床としては世界最大のものである。これは,石油鉱床として世界最大規模のガワール油田(サウジアラビア)の4倍以上の大きさである。
オイルサンドの成因は諸説あったが,最近では,石油根源岩中で生成された中比重の原油が,移動し,貯留岩に集積した後,天水などで洗われたり,微生物による分解作用を受けてできたとする説が支配的である。すなわち,貯留岩に集積した原油は,水洗いにより,水に溶けやすい軽い炭化水素,とくに芳香族炭化水素が除去される。次に,微生物の分解作用により,脂肪族飽和炭化水素が選択的に除去される。この結果,密度,硫黄含有率および粘度が増大し動けなくなったということになる。このような水洗いおよび微生物による分解は,約100℃以下の温度で原油が酸素および微生物を含む天水と接触する場所では普遍的に認められる現象である。オイルサンドの露天掘開発可能な地域はアサバスカの一部にすぎず,量的にはアルバータ州の8%(740億バレル)である。油層内回収法でしか開発できない油層深度150m以深の量は77%(7050億バレル)に達する。残りの15%は油層深度50~150mのもので,開発困難とされている。オイルサンドを油層内回収法で開発するためには,溶剤で溶かすか,加熱によって粘性を低下させる必要がある。加熱する方法には,高温シチームを圧入するか,空気圧入による油層内燃焼法などがある。流動化したオイルサンド原油は通常のポンプ採油法で生産できる。
執筆者:佐藤 俊二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
粘稠(ねんちゅう)な炭化水素類を含む砂のことをいう。以前はタールサンドとよばれていたが、炭化水素の成因および性状が有機物の熱分解により生成するタールと異なっているので、現在ではオイルサンドとよばれるようになった。オイルサンドには通常4~10重量%の油分(ビチューメン)が含まれており、この油の性質はアスファルトと類似している。
1973年の第一次オイル・ショック以降、オイルサンドは石油にかわる化石燃料の一つとして注目されるようになった。埋蔵量のほとんどすべてはカナダのアルバータ州(確認埋蔵量1732億バレル)とベネズエラのオリノコ川北岸(採掘可能量2350億バレル)に賦存しているが、可採鉱量は埋蔵量の数分の1以下と考えられている。
オイルサンドから得られる油分は重質粘稠であり、炭化水素以外の成分を比較的多く含有している。したがって、合成石油を得るためには、熱分解あるいは溶剤抽出、および水素化処理を施さなければならない。このような技術的問題のほかに、合成石油を製造する際に汚染物質や多くの二酸化炭素が排出されるという環境上の問題があり、なによりも生産コストが高いという欠点があった。しかし、カナダでは数十年も前から大規模な露天掘りが行われ、2009年には日産135万バレルにまで増産、さらに2020年には日産2億9000万バレルまで増産するという計画がある。また、ベネズエラでも2009年には日産約40万バレルの生産が行われている。オイルサンドはオイルシェールとともに非在来型石油と称されている。
[難波征太郎]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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タール状の重質な油分を含む砂または砂岩.タールサンドともいわれる.石油資源の一つ.カナダに大量に存在し,サウジアラビアの石油埋蔵量の約1.5倍に匹敵する可採埋蔵量を有す.カナダでは,露天掘りで採掘されたオイルサンドから,10質量% 程度含まれる油分(ビチュメンと称す)を回収し,水素化などの品質向上工程を経て合成原油を製造している.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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