アシブトコバチ(読み)あしぶとこばち

改訂新版 世界大百科事典 「アシブトコバチ」の意味・わかりやすい解説

アシブトコバチ (脚太小蜂)
chalcid fly
chalcid

膜翅目アシブトコバチ科Chalcididaeに属する昆虫総称。コバチ上科の中では大型の寄生バチで,体長2~7mm。多くは黒色か褐色で,白色や黄色,赤色などの斑紋がある。胸部は大型でせむし状になって点刻がある。後肢の腿節が非常に太いのでこの名がある。日本には約40種が分布している。主として鱗翅目ハエ類の幼虫やさなぎに寄生する。ときには鱗翅目やハエ類に寄生している寄生バチや寄生バエに寄生することもある。後腿節の先端と後脛節(こうけいせつ)の上部が黄色いキアシブトコバチBrachymeria obscurataは多くの鱗翅目のさなぎに寄生し,日本全国,アジア大陸からフィジー,ハワイなどに広く分布するもっともふつうの種である。後腿節の赤いアカアシブトコバチB.fonscolombeiニクバエクロバエなどハエ類のさなぎに寄生する。日本をはじめ,アジア大陸各地,ヨーロッパ,アフリカ,北アメリカなどに広く分布し,便所にふつうに見られる。頭に1対の角状突出物をもっているオニアシブトコバチDirhinus hesperidumイエバエやヤドリバエ類に寄生し,日本,アジア大陸,ヨーロッパ,北アフリカなどに分布する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アシブトコバチ」の意味・わかりやすい解説

アシブトコバチ
あしぶとこばち / 脚太小蜂

昆虫綱膜翅(まくし)目アシブトコバチ科のハチの総称。名は後ろ脚(あし)の腿節(たいせつ)が太いことに由来する。世界に広く分布するが、日本には約40種が知られている。体長2~7ミリメートル、体色は普通、黒色であるが、体の一部に黄色または赤色の斑紋(はんもん)をもつものもある。後ろ脚の腿節はきわめて太くなっていて、その下面に歯列があり、後ろ脚の徑節(けいせつ)は内方に曲がっている。これは卵を寄主に産み込む際、この後ろ脚で寄主をつかむのに適応している。すべてほかの昆虫の幼虫や蛹(さなぎ)に内部寄生をする寄生バチで、天敵として有益な働きをしている。普通、第一次寄生バチであるが、第二次寄生バチとなるものもある。寄主は鱗翅(りんし)類(チョウ、ガ類)、双翅類(ハエ、アブ類)、甲虫類(カミキリムシ、コガネムシ類など)、膜翅類(ハチ類)などである。代表的な種として、ガの蛹に寄生するキアシブトコバチBrachymeria obscurataや、ニクバエやクロバエの蛹に寄生するアカアシブトコバチB. fonscolombeiなどがいる。

[立川哲三郎]


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