日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニクバエ」の意味・わかりやすい解説
ニクバエ
にくばえ / 肉蠅
flesh fly
昆虫綱双翅(そうし)目有弁翅蠅類ニクバエ科Sarcophagidaeの総称。体長5ミリメートルの小形のものから15ミリメートルを超える大形のものまである。胸背に普通3本の太い黒色縦条をもち、腹部背面は市松模様を示す。背側剛毛が4本、雄の額(がく)の幅が広く、左右の複眼が額の中央で接近しないのが特徴。雌成虫はいずれも卵胎性で1齢幼虫を産む。ヤチニクバエ亜科Agriinae、ヤドリニクバエ亜科Miltogrammatinae、ハチノスヤドリニクバエ亜科Macronychiinaeのものは、おもに幼虫がハチ類の巣に寄生する。ニクバエ亜科Sarcophaginaeは一部バッタやガの幼虫に寄生するものもあるが、おもに腐肉に発生するのでこの名がある。センチニクバエBoettcherisca peregrinaはくみ取り便所に発生する衛生害虫で、ときに生肉や魚に産み付けられた幼虫を食べることによって、ヒトの蠅咀(はえうじ)症(消化器ハエウジ症)を引き起こす。体の紋様から古くはシマバエとよばれたこともある。
[倉橋 弘]