改訂新版 世界大百科事典 「ニクバエ」の意味・わかりやすい解説
ニクバエ (肉蠅)
flesh fly
双翅目ニクバエ科Sarcophagidaeに属する昆虫の総称。卵胎生で,通常幼虫の食物である肉や魚などに1齢幼虫を生みつける。このほか,ヒトや哺乳類の皮下に寄生する種や,ハチの巣に寄生するもの,鱗翅類の幼虫に寄生するものなどがある。世界に数百種,日本からは約90種知られているが,生活史のわかっている種はわずかである。成虫は体長3~20mm,一般に灰色で,胸背に3本の黒縦線をもち,腹部は市松模様のものが多い。おもな発生源は動物の死体や糞である。ハナバチノスヤドリニクバエ(Metopia属など数属を含む。体長6~7mm)は,ハナバチの巣に産卵し,幼虫はハチの集めた花粉を食べて育つ。幼虫が腐肉や動物の糞を食べて育つため,衛生害虫として問題となる種も多い。センチニクバエBoettcherisca peregrina(体長12~13mm)の幼虫は,夏期に便池から発生する。後方気門が凹陥し,そこに空気をためるため,おぼれにくく,イエバエなどの生活できない便池にも発生する。1齢幼虫から成虫までの期間は25~27℃で約15日である。成虫は,羽化後4~5日目に交尾を開始し,10日後には子を生み始める。雌は70~80匹の幼虫を生む。
執筆者:篠永 哲
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報