アジタケーサカンバリン(その他表記)Ajita Kesakambalin

改訂新版 世界大百科事典 「アジタケーサカンバリン」の意味・わかりやすい解説

アジタ・ケーサカンバリン
Ajita Kesakambalin

仏教興隆期に活躍したインド自由思想家の一人。生没年不詳。唯物論的思想のもとに道徳否定論を唱える。彼によれば,人間は地,水,火,風という4元素から成り,死ねば4元素はそれぞれ自然界に戻り,死後霊魂存在することはない。したがって来世などは存在しないし,善業・悪業の果報を死後に受けることもなく,ベーダ聖典の説く祭式も無意味であると主張した。彼の思想は,順世派ローカーヤタ派)の唯物論的・感覚論的・快楽論的思想と類似する。〈ケーサカンバリン〉とは,〈毛髪の衣をまとった人〉の意で,古代インドの苦行者の中には,このような風習に従うものがあった。
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百科事典マイペディア 「アジタケーサカンバリン」の意味・わかりやすい解説

アジタ・ケーサカンバリン

仏教興隆期のインドの思想家。ケーサカンバリンとは〈毛髪の衣を着た人〉の意。六師外道の一人。地水火風の4元素のみを真の実在とし,霊魂の存在,来世,因果応報を否定した感覚的唯物論者。この思想の流れをくむものを順世派(ローカーヤタ派)という。
→関連項目自由思想家

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世界大百科事典(旧版)内のアジタケーサカンバリンの言及

【順世派】より

…古代インドの自由思想家の一人アジタ・ケーサカンバリンが説いた唯物論・快楽至上主義の説を奉ずる学派。アジタの四元素説は霊魂の存在を完全に否定するもので,正統バラモン思想のアートマンを否定する一方,当時の人々が最も重大視したの報いの有無の問題に関しても,善悪の行為の報いはいっさい否定し,道徳も宗教も必要なしとするものであった。…

【唯物論】より

…精神は食物から,いわば発酵して現れたものであるというのがそれである。また,仏教成立期には,〈六師外道〉の一人であるアジタ・ケーサカンバリンが,人間は地水火風の4元素から成り,死ねばまたそれぞれの元素の集合に帰入するだけであり,霊魂なるものが残ることはないと主張した。このアジタをはじめとして,霊魂(自我)は身体にほかならないという説を唱えた人々は,ローカーヤタ(順世派という)とか,チャールバーカと呼ばれた。…

※「アジタケーサカンバリン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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