六師外道(読み)ロクシゲドウ

デジタル大辞泉 「六師外道」の意味・読み・例文・類語

ろくし‐げどう〔‐ゲダウ〕【六師外道】

釈迦在世時の中インドの代表的な六人の思想家。仏教側からの称。道徳否定の富蘭那迦葉ふらんなかしょう(プーラナ=カッサバ)、決定論末伽梨拘舎梨まかりくしゃりマッカリゴーサーラ)、懐疑論刪闍耶毘羅胝子さんじゃやびらていしサンジャヤ=ベーラッティプッタ)、快楽主義唯物論阿耆多翅舎欽婆羅あぎたきしゃきんばらアジタ=ケーサカンバラ)、因果否定論の迦羅鳩駄迦旃延からくだかせんねん(パクダ=カッチャーヤナ)、ジャイナ教開祖尼乾陀若提子にけんだにゃだいし(ニガンタ=ナータプッタまたはマハービーラ)をいう。

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精選版 日本国語大辞典 「六師外道」の意味・読み・例文・類語

ろくし‐げどう‥ゲダウ【六師外道】

  1. 仏語。釈迦在世当時の代表的な六人の思想家。すなわち、道徳否定の富蘭那迦葉(ふらんなかしょう)・決定論の末伽梨拘舎梨(まかりくしゃり)・懐疑論の刪闍耶毘羅胝子(さんじゃやびらていし)・快楽主義的唯物論の阿耆多翅舎欽婆羅(あぎたきしゃきんばら)・因果否定論の迦羅鳩駄迦旃延(からくだかせんねん)・ジャイナ教の祖、尼乾陀若提子(にけんだにゃだいし)の六人をいう。
    1. [初出の実例]「六師外道と云ふ者、長者の許に来れり」(出典:今昔物語集(1120頃か)一)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「六師外道」の意味・わかりやすい解説

六師外道
ろくしげどう

紀元前5世紀ころ、釈迦(しゃか)と同時代に、中インド地方(ガンジス川中流域)で活躍した6人の有力な自由思想家のこと。仏教の側からみて異端の思想家であることから外道という。(1)道徳否定論者のプーラナ・カッサパ、(2)決定論者でアージービカ派の開祖のマッカリ・ゴーサーラ、(3)七要素説のパクダ・カッチャーヤナ、(4)唯物論者のアジタ・ケーサカンバリン、(5)懐疑論者のサンジャヤ・ベーラッティプッタ、(6)ジャイナ教の開祖であるニガンタ・ナータプッタ(マハービーラ)の6人。このうち、プーラナは、殺生(せっしょう)、盗賊姦通(かんつう)、嘘言(きょげん)などの行為をはたらこうとも悪をなしたのではなく、また祭祀(さいし)、布施(ふせ)、自己制御、真実語をなしたとしても善の生じることはなく、善悪の行為に対する果報もまた存在しないと説いた。パクダは、人間は地・水・火・風の4元素と苦・楽・霊魂との7要素から構成され、これら7要素は常住不変でなにものも生み出すことなく、なにものにも損なわれることがないから、世の中にはいかなる行為もなく、たとえ利剣をもって頭を断つとも剣刃が7要素の間隙(かんげき)を通過するのみであると説いた。サンジャヤは、来世の存在などの問いに対してことさらあいまいでとらえがたい議論を行い、確答することをしなかった。彼によって初めて形而上学(けいじじょうがく)的問題に対する判断中止の思想がインドに現れたとされる。舎利弗(しゃりほつ)、大目犍連(だいもくけんれん)という釈迦の二大弟子はともに当初はサンジャヤの徒であった。

[松田愼也]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「六師外道」の意味・わかりやすい解説

六師外道
ろくしげどう

ゴータマ・ブッダ在世当時に活躍した,6人の代表的なインドの自由思想家たち。王権が伸張して旧来のバラモンの威信が次第に衰え,また貨幣経済が発展し,物質的生活が豊かになっていった時代を背景に現れた思想家たちであるが,彼らを総称して,「つとめる人」 sramaṇa (→沙門 ) と称する。これらのなかで「六師」と呼ばれる思想家たちは,道徳否定論を説いたプーラナ・カッサパ,7種の要素をもって人間の個体の成立を説いたパクダ・カッチャーヤナ,輪廻の生存は無因無縁であるとし決定論を説いたマッカリ・ゴーサーラ,唯物論を主張したアジタ・ケーサカンバラ,不可知論を唱えたサンジャヤ・ベーラッティプッタ,ジャイナ教の祖師であるニガンタ・ナータプッタ (→マハービーラ ) である。それぞれの主張のうち,共通するものは,祭祀,供犠を否定して,反バラモン的態度を明らかにした点にあり,それらはインド思想史における変革期をもたらした。

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改訂新版 世界大百科事典 「六師外道」の意味・わかりやすい解説

六師外道 (ろくしげどう)

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百科事典マイペディア 「六師外道」の意味・わかりやすい解説

六師外道【ろくしげどう】

自由思想家

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世界大百科事典(旧版)内の六師外道の言及

【アージービカ教】より

…仏陀の時代に仏教,ジャイナ教と並ぶほど有力だった裸形托鉢教団の宗教。六師外道の一人であるマッカリ・ゴーサーラを主導者とする。〈アージービカ〉という名称は,他教団からの貶称として用いられる時には,〈生活の糧を得るために修行する者〉の意となり,漢訳仏典では〈邪命外道〉と訳されている。…

【自由思想家】より

…尊称マハービーラ,ジナ),仏教を開いたゴータマ・ブッダ(以上すべてパーリ語表記)などである。前6者は,仏教からは〈六師外道〉と呼ばれている。また,仏教によれば,この六師の学説(見)を含めて,〈六十二見〉がそのころ栄えていたという。…

※「六師外道」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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