百科事典マイペディア 「アスタルテ」の意味・わかりやすい解説
アスタルテ
→関連項目バアル|ビーナス|母神像
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…彼女はまたトロイア王家の一員アンキセスを見初め,ローマ建国の祖アエネアスの母となったほか,美青年アドニスを寵愛した話でもよく知られる。もともと彼女はセム系の豊穣(ほうじよう)多産の女神アスタルテに起源が求められる神格で,ギリシアへはミュケナイ時代にキプロス島を経由して入ったと考えられる。海に生まれてから,まずキプロス島またはキュテラ島(ペロポネソス半島南端に近い小島)に上陸したという伝承は,彼女の東方からの伝来の記憶をとどめるものであり,豊穣神としての性格はアドニスとの関係に認められる。…
…ただハーンがこのような立論をするほど,古代オリエント世界において,牛が農耕儀礼で犠牲にされ,神話上の神シンボルに伴って登場したことは確かなことである。 豊饒の女神,例えばフェニキアのアスタルテ,バビロニアのイシュタル,古代エジプトのイシス,ギリシアのイオはすべて月の女神とみなされ,かつ雌牛と密接なかかわりをもっている。農耕にまつわる祭儀や神話と牛とのかかわりは,前2千年紀後半,東地中海のカナンの地に栄えたウガリト王国の神話に登場するバアルとアナトの物語の中にみごとに示されている。…
…ちなみにバアルとはセム語で〈主〉を意味し,同じくセム系言語の〈わが主〉を意味するアドンあるいはアドニと同義語),大洋に君臨する最高神。母はアシュタロテ(アスタルテ),すべての神々の母であった。兄弟のひとりは,洪水の神ヤム・ナハルYam‐Nahr,他のひとりは死の神モトMotで,火の空でもって大地を乾燥させる神である。…
…宗教学的には,大地の豊穣を確実にするための象徴儀礼であり,その背後には,地母神に対する崇拝が存在していた。聖婚儀礼は,小アジアから東部地中海沿岸一帯に広く分布していたが,その中心地はキプロス島の南西端のパフォスPaphosにあるアスタルテ(ギリシアのアフロディテと同一視された)の神殿であった。この地域に住む未婚女性は,結婚前に神殿に詣で,一夜パフォスの王の前に聖なる花嫁として処女を捧げる習俗に従っていた。…
…この神話は初期メソポタミアで漸次明確な形をとり,のちにシリア,東地中海地方に広がった。この女神はシリア,フェニキアではアスタルテ,アシュタロトと呼ばれ,本来の地母神的性格は薄くなり,愛と美の女神としてしばしば裸身の処女の姿で表現された。天体神としても性を支配する金星を代表し,その神殿は男女の交歓の場となった。…
…世界最古の母子像は,メソポタミアで出土した前3700年ころの,乳児を抱く蛇頭女性像である。古代オリエント世界ではアスタルテ(イシュタル)を代表とする女神祭祀がひろくみられ,それらは大地の豊饒力と女性の生産力を基本的に象徴化していた。そしてそのような女神が子神を伴って崇拝されることも少なくなかった。…
※「アスタルテ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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