金星(読み)きんぼし(英語表記)Venus

翻訳|Venus

精選版 日本国語大辞典 「金星」の意味・読み・例文・類語

きん‐ぼし【金星】

〘名〙
相撲で、平幕力士横綱を倒したときの勝星
※人情馬鹿物語(1955)〈川口松太郎〉八「横綱にも金星をあげて七勝三敗の星を残した」
② (比喩的に) スポーツで、優勝候補と見られている強い相手を倒すこと。また、大きな手柄殊勲
※熱球三十年(1934)〈飛田穂洲〉終篇「立教は竹中太田時代よく早稲田から金星(キンボシ)を奪った」

きん‐せい【金星】

太陽系の中で太陽から二番目の距離にある惑星水星地球との間に位置し、太陽からの平均距離一億八二一万キロメートル、体積は地球の〇・八五七倍、質量は地球の〇・八一五倍、公転周期〇・六一五二年、自転周期二四三日。濃密な大気があり、表面は雲におおわれている。衛星はなく、日没後西空に見えるときは宵(よい)明星(みょうじょう)、日の出前東の空に見えるときは明けの明星という。漢名太白ビーナス。〔遠西観象図説(1823)〕

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デジタル大辞泉 「金星」の意味・読み・例文・類語

きん‐せい【金星】

太陽系の2番目の惑星。地球の軌道のすぐ内側にあり、太陽との平均距離は1億820万キロすなわち0.7233天文単位、公転周期は225日、自転周期は243.01日で、公転とは向きが逆。地球よりわずかに小さく、質量は地球の0.815倍。衛星はない。月のように満ち欠けがあり、最大の明るさはマイナス4.7等。大気の大部分が炭酸ガスで、表面の気温はセ氏約470度。日没後西の空に見えるときを宵の明星、明け方東の空に見えるときを明けの明星とよぶ。太白たいはく。ビーナス。
[類語]太陽系水星明星明けの明星宵の明星地球火星木星土星天王星海王星

きん‐ぼし【金星】

相撲で、平幕の力士が横綱を倒したときの勝ち星。「金星をあげる」
転じて、上位・格上の相手を倒すこと。また比喩的に、大きな手柄。殊勲。「名人を破る金星
[補説]さらに強調して「大金星」ということもある。
[類語]番狂わせ大物食いジャイアントキリング逆転勝ちサプライズアップセット

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改訂新版 世界大百科事典 「金星」の意味・わかりやすい解説

金星 (きんせい)
Venus

基本情報
軌道半長径=0.72333天文単位 
離心率=0.0068 
軌道傾斜=3°.395 
太陽からの距離最小=1.075×108km 平均=1.082×108km 最大=1.089×108km 
公転周期=224.701日 
平均軌道速度=35.02km/s 
会合周期=584.0日 
赤道半径=6052km 
体積=0.8572(地球=1) 
質量=0.81500(地球=1) 
平均密度=5.24g/cm3 
自転周期=243.02日 
赤道傾斜角=177°.4 
アルベド=0.78 
極大光度=-4.7等 
赤道重力=0.91(地球=1) 
脱出速度=10.36km/s

太陽系の第2惑星。金星は太陽と月を除くと全天でいちばん明るい天体である。そのため太古より人類の注目を集め,バビロニアでは農業に必要な暦の手引きとなるため豊穣(ほうじよう)の神イシュタルの名を冠してあがめられ,ギリシアでは美の女神アフロディテ(ローマ神話ではウェヌス=ビーナス)として祭られた。中国では,その光が白銀を思わせるところから太白と呼んだ。地球よりも太陽に近く,太陽より48°以上離れないので真夜中の空に見ることなく,日没後の西空,または日の出前の東空に見るのみである。夕空に見えるときには〈宵の明星〉,暁の空に見えるときには〈明の明星〉という。古代ギリシアでは夕空に見えるときにはヘスペロスHesperos,暁の空に見えるときにはヘオスフォロスHeōsphorosと呼び,中国ではそれぞれ長庚(ちようこう),啓明と呼んだ。G.ガリレイが月と同様の満ち欠けを発見し,プトレマイオス天文学からコペルニクス天文学への転換のきっかけを作ったことは有名である。

金星は地球軌道のすぐ内側,0.723天文単位のところをほとんど完全な円を描いて回る。離心率0.0068は惑星中最小である。その公転周期224.7日,一方,その自転周期は243日と遅く,しかも他の惑星と違って,公転とは逆向きに回っている。対太陽自転周期,すなわち昼夜がめぐる周期は116.7日である。

金星の特徴は,地球の双生児と呼ばれるほど地球によく似た質量と半径をもっていることである。観測値から計算される平均密度は5.24g/cm3だが,中心部では高圧のため物質が圧縮されているので,その圧力部分の補正をすると4.40g/cm3となり,同様の補正をした地球の値4.45g/cm3とほとんど違わない。したがって,中心に金属鉄のコア,その外側に岩のマントルという内部構造は,地球と同じであると考えられる。

金星は大きな望遠鏡を使って眺めても,黄白色ののっぺりとした厚い雲によって一面覆われている。したがって,直接その表面の状態を調べる手段がなかなかなかった。1978年金星を回る軌道に入ったビーナスパイオニア2号は,レーダーでその表面の高低を測定し,おおまかな地形図を作ることに成功した。それによると,最高のマクスウェル山脈をもつイシュタル大陸やアフロディテ大陸など二,三の高地はあるものの,ほとんどの表面は地球に比べて平たんであることがわかった。また,1975年金星表面に軟着陸したベネラ9,10号は放射能の測定から着陸地点付近の岩石の性質を調べた。それによると岩は地球に似て玄武岩質であり,1972年にベネラ8号が出した花コウ岩質という結果と合わせても地球とよく似ているという印象をいっそう深めた。また,400℃以上という高い気温の中で冷やしながら作動させたテレビカメラに映った地上の景色は,9号の近くが鋭いかどをもった岩石,10号の近くではかどがほとんどとれた岩石に富むものであった。前者は金星上で今なお火成活動が激しいことを意味する。なぜなら,ごく最近形成されたものでないと,金星大気の強い風化作用で丸められ,かどがなくなってしまうはずだからである。

ベネラ8号のデータでは,地表での気温と気圧はそれぞれ470℃および90atmという値であった。気温は鉛もとけるほどであるし,気圧は地球の海面下1000mの圧力に相当するたいへんな値である。大気の成分も探査機の活躍でほぼ完全に判明している。二酸化炭素が主体で約95%を占め,窒素が3~4%,アルゴンが残りの大部分である。アルゴンには原子量が36の原始希ガスと放射性カリウム40の崩壊によって生じた原子量40のものがあるが,その比はほぼ1であった。そのほかに微量成分として0.1%程度の水蒸気,40ppmくらいの一酸化炭素,1ppm程度の塩化水素などがある。ひと口でいえば有毒成分でいっぱいの大気である。一見すると地球大気の窒素78%,酸素21%,アルゴン40の1%という組成と似ても似つかぬように思われる。しかし,よく考えると両者は本質的には同じ大気といえる。まず,地球上には表面の3/4を占める海があり,熱かった地球生成時には,これが水蒸気として原始地球大気中に含まれていたと考えられる。また,海底にある石灰岩中に含まれる二酸化炭素も,原始大気中にあったものが海にとけて変化したものと考えられるので,これも原始大気の成分に加える。こうすると原始地球大気は300atmの水蒸気,50atmの二酸化炭素,それに0.8atmの窒素からできていたことになる(0.2atmの酸素は後代植物の光合成からできたもので,原初にはなかった)。この原始地球大気から水蒸気を差し引くとほぼ金星の大気となる。また,原始地球大気全体の組成は火山ガスに似ていることも,地球や金星の大気が惑星内部からの脱ガスによって形成されたものであることを示唆している。金星での水蒸気の欠乏の原因については,金星が太陽に近く,たいへん高温であることに起因すると考えられている。一つは,このため金星を作る原材料の岩が水を含まなかったため集積したとき水を放出できなかったとする。別の考え方は,水は最初にはあったのだが,金星では温室効果が強く効き,みな大気の上方に上り,太陽紫外線ですっかり分解され,宇宙空間に逃げ去ってしまったという考え方である。

 厚い金星の雲の温度は,観測によれば-23℃程度で,二酸化炭素は凍らず,ドライアイスは形成されない。水滴ではないかという推測も,水特有の2.7μm付近でのスペクトルの吸収は見られるが,それ以外の波長にもある多数の赤外スペクトルが検出されないという欠陥がある。さらに決定的な反証は,太陽反射光の偏光の測定から雲粒子の屈折率が1.44であったことにある。水の屈折率は1.33にすぎないからである。塩酸説や塩化アンモニウム説などさまざまな説が出されたが,このデータにもっともよく合うのは,濃硫酸説である。平均1μmくらいの半径をもつ濃硫酸液滴を雲粒子とすると偏光データや2.7μmの吸収だけでなく,11.2μmに観測されていた吸収も説明できるし,硫酸なら-23℃という雲上温度でも雲滴でありうる。水蒸気が雲上に検出できなかったのも硫酸が強い吸湿性をもっているからと解釈できる。また,金星雲中に入った探査機の質量分析計が,二酸化硫黄と思われるスペクトルを検出したこと,また同時に地上観測からもこの分子の吸収スペクトルを観測したことにより,雲の最上部は濃硫酸であることは決定的となった。しかし,このほかに探査機のデータは,金星の雲が3層に分かれ,さらに雲が切れたところから地表に達するまでの大気中にも,小量の雲状物質が存在することを示していた。濃い雲の中での視界は3kmほどあり(むしろかすみに近い),地表に近いところの視界は20kmほどである。ソ連の研究者は,雲の下層部分はむしろ濃塩酸であるといい,雲下の薄いかすみの部分の粒子は塩化水銀や硫黄ではないかと論じた。また,探査機が降下中,下層の大気中で強い光を観測,周回軌道上でも雷の出す空電も検出されている。

雲の外側の大気はよく観測できるので,内側に比べてよく知られている。可視光線では,切れ目のないように見える雲も,紫外線に近い波長で見るとさまざまな模様が見え,その動きから上層部の大気の運動がわかる。風速は秒速100mに達し,とくに目だつのは,赤道のあたりを4日でひと回りしている帯状風である。地表付近では秒速数mで,赤道から極へとらせん状に向かう予測しやすいものなのに,上空ではなぜこのような風が吹いているのかは,金星気象学の大きななぞである。もっと上空の超高層大気にも,まだわかっていないことが多い。探査機の出す電波を使って金星の電離層の測定をしてみたところ,地球の電離層(最大電子密度106個/cm3,高度幅数百km)に比べてたいへん規模の小さいもの(最大電子密度105個/cm3,高度幅数十km)であった。二酸化炭素があるから,この分子が壊れて酸素原子ができ,これが金星上層大気の主成分になるとすれば,地球と変わらぬ電離層ができるはずであるが,そのようなものはない。この酸素による酸化作用で雲の濃硫酸が生成されると考えられるので,この問題は究極的には雲の形成にも関連するはずである。

 もっと外側へいくと,太陽風が金星大気とぶつかり合う領域が発見された。地球は地磁気をもち,磁気圏を形成して太陽風の侵入を防いでいるが,金星は磁場をほとんどもたないので,このような領域が存在するのである。この付近のプラズマの動きは地球では経験できない実験場を提供している。
執筆者:

金星はギリシア神話の美神アフロディテ,ローマ神話のウェヌス(ビーナス)と同一視された。錬金術では銅のシンボル。占星術では一般に栄誉と富と幸福をもたらす穏健な惑星とされる。吉位にある場合は率直,博愛,賢明,正義の性格を与えるが,凶位にあればうぬぼれと虚栄心の強い人間を出現させるという。人体の支配部位はのど,肝臓,胸,子宮,腰部,性器で,リンパ質の体を作るとされる。
執筆者:


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日本大百科全書(ニッポニカ) 「金星」の意味・わかりやすい解説

金星
きんせい
Venus

地球軌道のすぐ内側を回る太陽系の惑星で、地球にもっとも接近する惑星である。

 中米に栄えたマヤ文明では、太陽や月に次いで惑星、とくに金星の運行に大きな関心が払われていた。金星が特別視されていたのはその明るさのせいかもしれない。月も灯火もない暗夜では、金星の光で影ができるほどである。金星は、ときに1等星の明るさの200倍以上になり、見える方向がわかれば、昼間の青空に肉眼でみつけられるほどである。

 金星は大きさや質量が地球と似ていることから、地球の双子星ともいわれたほどで、直径は地球の0.949倍で、赤道半径は6052キロメートル、質量は地球の0.815倍である。地球軌道に対する軌道の傾きは3.4度と小さく、軌道の離心率も0.007しかない。金星の太陽からの平均距離は0.7233天文単位(1億0820万キロメートル)、公転周期は0.615年(地球の日数で225日)、近日点と遠日点での太陽からの距離の差は146万キロメートルである。

 ガリレオ・ガリレイは、1610年に自作望遠鏡による観測から、金星の満ち欠けが天動説では説明できない変化であることを確認したが、このことが地動説を支持する根拠の一つとなった。ヨハネス・ケプラーは、1631年12月7日(彼が死んだ年の翌年)の金星の太陽面通過を予報し、次に起こるのは1761年であると計算で求めていた。イギリスのジェレマイア・ホロックスJeremiah Horrocks(1618―1641)は、ケプラーの惑星運動理論の軌道を改良し、より正確な計算を行い、1639年12月4日(当時イギリスで使われていたユリウス暦では11月24日)に金星が太陽面を通過することを予測した。当日、彼と友人のウィリアム・クラブトリーWilliam Crabtree(1610―1644)は、太陽面を移動する金星のシルエットを史上初めて観測することに成功した。

 17世紀当時、各惑星相互の軌道サイズの比は観測から求められていたが、実際の長さはどれくらいなのかがわかっていなかった。イギリスのエドモンド・ハリーは、金星の太陽面通過の観測から地球―太陽間距離を求めることに関心を向けた。地球上の大きく離れた2地点から観測すれば、金星位置がわずかにずれて観測される。このことから、金星や太陽までの距離を計算で求めることができるという詳しい論文を著した(1716)。

 18~19世紀にかけては、国の威信をかけた金星の太陽面通過観測隊が世界各地に送られた。イギリスのキャプテン・クックの最初の航海では、1769年6月の金星の太陽面通過の観測がタヒチで行われた。1874年(明治7)12月9日、日本などを含むアジアで観測可能ということから、日本にもアメリカ、フランス、メキシコから観測隊がやってきた。観測地となった長崎、神戸、横浜には記念碑が建てられている(2022年には日本天文学会による日本天文遺産に認定)。

 20世紀になると、地球接近小惑星の観測から正確に太陽系の大きさを求めることできるようになり、第二次世界大戦後には、地球から金星へのレーダー観測により高精度の距離測定が可能になった。

 一方、1761年の金星の太陽面通過時、背景の太陽光が金星大気を通り屈折するため、金星大気が光のリングのように見える現象がロシアのミハイル・ロモノーソフなどによって観測された。とくにロモノーソフはスケッチを含む観測結果を早期に発表し、金星大気による屈折という説明を添えていた。

 金星は一面雲に覆われているため、自転周期が明らかになったのは20世紀に入ってからだった。1920年代の紫外線フィルターを使った観測で見られたという暗い模様を追跡するため、観測に乗り出したアマチュア天文家がいた。フランス生まれのシャルル・ボワイエCharles Boyer(1911―1989)である。彼は長らくアフリカで司法の仕事についていた。フランスのピク・デュ・ミディ天文台と連絡を取り合い、自作望遠鏡で金星の撮影を始めようとするが、フィルターは青紫色フィルターで代用した。1957年9月の観測から彼は、薄暗い模様が4日ごとに元の位置に戻ってくることに気づいた。

 1964年パリ天文台による分光観測から、赤道部分の速度は公転の向きとは逆で秒速100メートルということがわかり、それはボワイエの観測結果を支持するものだった。1960年代に入ると、地上から金星へのレーダー観測ができるようになり、1964年には金星の固体部分は250日程度で逆向きの自転をしていることもわかり、のちに約243日周期であることが明らかになった(ちなみに公転周期は約225日)。上層大気は地面の自転周期の約60倍もの速さで回転していることになる。

 ボワイエの結論は、とくにフランス以外の国々では懐疑的にみられた。上層大気の4日周期が広く認められるのは、1970年代の探査機による観測結果が得られるようになってからである。この異様な大気の高速回転は超回転(スーパーローテーション)とよばれ、大きな謎となった。

 1962年打ち上げのアメリカの探査機マリナー2号が金星接近時に行ったマイクロ波放射計による観測から、地表は約500℃という高温であることが判明。1967年に打ち上げられたソ連の探査機ベネラ4号の降下カプセルからの測定で、金星大気の主成分が二酸化炭素であることが明らかになった。1970年打ち上げのベネラ7号により表面温度は475℃(その後の探査を含め、平均表面温度約460℃)、気圧は92気圧と求められた。1974年には、航空機からの赤外スペクトル観測で金星の雲の主成分が硫酸であることがわかった。高度45~70キロメートル付近には濃硫酸を主成分とする雲が浮かび金星全体を覆っているため、太陽光の78%を反射し金星の輝きを生み出している。

 1978年打ち上げのアメリカのパイオニア・ビーナス探査機(周回機と大気圏突入機に分けての打ち上げ)の周回機ではレーダー観測が行われ、地形データが得られた。大小の突入機は大気のデータを取得した。1989年にはスペースシャトルからマゼラン探査機が出発し、1990年に金星周回軌道に入り、軌道上からレーダー観測を行い詳細な地形データを得た。プレートテクトニクスの痕跡(こんせき)はみつからず、表面の85%以上が固まった溶岩流で覆われていた。現在も火山活動があるのかは不明。

 2005年にESA(イーサ)(ヨーロッパ宇宙機関)が打ち上げたビーナス・エクスプレスは、金星周回軌道から金星大気とプラズマ環境の観測を行った。2010年(平成22)5月打ち上げの日本の探査機「あかつき」は、同年12月に金星周回軌道に入るはずだったが、十分なブレーキをかけられぬままエンジン停止。ふたたび金星に接近した2015年12月には姿勢制御エンジンだけで金星周回軌道投入に成功。金星大気についての理解が進もうとしている。

[山田陽志郎 2022年9月21日]


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百科事典マイペディア 「金星」の意味・わかりやすい解説

金星【きんせい】

太陽系の第2惑星。太陽との平均距離1億821万km(0.72天文単位),公転周期0.615年(225日)。極大光度−4.4等。半径6052km(地球の0.96倍),質量は地球の0.82倍,表面重力は地球の0.91倍,平均密度5.24g/cm3。周期243日で公転と逆向きに自転する。地球から見て太陽の東西48°以内を往復するため,日の出前の東の空,日没後の西の空に見えるのみで,真夜中の空には見ることができない。暁の空に見えるときを〈明の明星(あけのみょうじょう)〉,夕空に見えるときを〈宵(よい)の明星〉と呼ぶ。月と同様に満ち欠けすることを発見したのはG.ガリレイ。 金星の表面は密雲におおわれ強く太陽光を反射する。ソ連のベネラ8号の測定では,金星大気は地面で約90気圧,約95%が炭酸ガス,3〜4%が窒素で,残りの大部分はアルゴン。平均地表温度約470℃。高度約60kmの雲が帯状に流れていることから,金星の大気は大循環しており,毎秒10mないし100mの風が推定されている。雲の粒子は球状で屈折率は1.44であることがわかっており,高温でも液体であり,屈折率のこの値とか金星大気に水蒸気が少ないことから推定し,雲は濃硫酸と考えられる。1975年金星表面に軟着陸したソ連のベネラ9号,10号はパノラマ写真を撮影して地球に送信してきたが,起伏のはげしい地形で,かなり角のある直径30〜40cmの岩石と泥土が存在している。1978年米国のパイオニア・ビーナスも金星に到着し,写真を撮影,その結果,高さ6kmの高地,深さ数kmの地溝,直径250kmの大火口などが発見された。さらに1989年に打ち上げられた米国の探査機マゼランは金星表面の詳細な地図を作成,8000m級の活火山など地殻変動が生じている証拠を発見した。 金星はギリシア神話のアフロディテ,ローマ神話のウェヌス(ビーナス)と同一視された。占星術ではふつう栄誉・富・幸福をもたらすとされ,錬金術では銅のシンボル。
→関連項目明の明星太白明星宵の明星

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「金星」の意味・わかりやすい解説

金星
きんせい
Venus

太陽系の内側から2番目の惑星。軌道の離心率は 0.0068ときわめて小さく,太陽からの距離は近日点で1億 748万 km,遠日点で1億 895万 kmとあまり変らない。公転周期 224.7日。赤道半径 6052kmで地球よりわずかに小さい。アルベドは 0.85,最大実視等級は-4.4等に達し,惑星のうちで最も明るく,最大離角のときには日没後の西天あるいは日の出前の東天に輝き,宵の明星,明けの明星,明星 (あかぼし) と呼ばれる。厚い大気層のために表面の詳しい点は観測が行届かず,環境は地球とほとんど同じと考えられていたが,探査の結果,90気圧もの二酸化炭素におおわれた 730Kをこえる灼熱地獄であることが明らかになった。金星の満ち欠けはガリレイが望遠鏡の初期の成果として発見した。衛星はない。

金星
きんぼし

平幕の力士が本場所で横綱を倒すことの俗称。月給とは別に本場所ごとに支給される褒賞金の基準額に,金星一つにつき一定額が加算される。史上最多の金星獲得は安芸之島の 16個。

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知恵蔵 「金星」の解説

金星

太陽から2番目、水星と地球の間にある惑星。日没後、西の空に見えるのが宵(よい)の明星、明け方東の空に見えるのは明けの明星。月のように満ち欠けがあり、惑星中で最も明るく最大光輝時には-4.7等になり、昼間肉眼で見ることができる。公転周期は225日。一方、243日の周期で公転と逆向きに自転している特異な惑星。半径は地球の0.95倍、質量は地球の0.815倍で地球に近いが、表面の環境は大きく異なる。二酸化炭素を主成分とする濃密な大気(密度が地球大気の約100倍)に包まれ、温室効果の状態が著しい。表面の温度は約470℃になり、鉛の融点を超える。探査機のレーダー観測によると、地表は起伏に富み、10kmを超える高い山や高地や乾燥した低地があり、激しい火山活動や溶岩流の跡、大きなクレーターが見られる。

(土佐誠 東北大学教授 / 2007年)

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占い用語集 「金星」の解説

金星

牡牛座と天秤座の支配星。古代ローマの愛と美の女神ヴィーナス(ギリシア神話ではアフロディテ)から命名。水星に続いて地球から二番目に近く、昔から宵の明星、明けの明星と親しまれた。占星学上の基本的意味は「愛と美と財産」。魅力・愛情・快楽・美的感覚など、女性らしい内容が多い。ホロスコープ上では個人の楽しみ方、好み、自分の飾らせ方や金運などを表す。また男性のホロスコープ上では、ユング心理学のアニマ(理想の女性)を表すといわれる。

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とっさの日本語便利帳 「金星」の解説

金星

勝負に勝つことを星、白星と呼び(負けは黒星)、平幕(ひらまく)力士が横綱に勝った殊勲を特にこう呼ぶ。金星一つに対し四万円の報奨金が、場所ごとに支給される。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「金星」の解説

金星 (キンボシ)

学名:Dolicothele longimamma
植物。サボテン科の園芸植物

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世界大百科事典(旧版)内の金星の言及

【海】より


[海の役割]
 太陽系の惑星で現在海のあるのは地球だけである。たとえば,金星では表面が高温なため水が液体として存在し得ず,火星では液体の水はなく,両極に氷があるのみである。このように地球に液体の水,すなわち海があるのは太陽からの距離と水を地球につなぎとめておくための地球の大きさが適切であったからである。…

【風】より

…このような強い偏西風は赤道から熱を運ぶためではなく,極でのドライアイス生成による大気の質量損失を補うために極方向へ大気の移流が起こることによって維持し続けられている。
[金星]
 金星の自転周期は243日であるが,紫外線写真によれば縞模様の雲が約60倍も速い4日という周期で赤道に沿って回転していることが示されている。一方,こうした雲の動きとは別に一連の人工衛星による風の観測が行われ,金星の上層大気は100m/s前後の速度で運動していることがわかった。…

【占星術】より

…天体の運行と人間や国家の運命との照応関係の記録は前2千年紀の初めころから存在する。最古の占星術文献といわれる《エヌマ・アヌ・エンリル》はシン(月神)とシャマシュ(太陽神),アダド(天候神),イシュタル(金星神)の凶兆を記しているが,その成立はバビロン第1王朝(最盛期前18世紀)の頃と考えられている。この伝統はアッシリア,ペルシア帝国に及び,バビロニアがギリシア人によってカルデアとも呼ばれたことから,この神聖科学は〈カルデア人の術〉と,これを独占する司祭階級は〈カルデア人〉と称された。…

【大気】より

…太陽系には地球のように質量の小さな地球型惑星と木星のような巨大な木星型惑星とがあって,それぞれ違った大気組成をもっている。金星は地球と大きさは似ているが,酸素はほとんどなく,二酸化炭素が96.4%,窒素が3.4%,アルゴンが残りの大半を占め,気圧は約90気圧,気温約450℃である。地球の二酸化炭素が0.03%にすぎないのに比べるとかなり多い。…

【太白】より

金星の古代中国名。五星の一つ。…

【惑星】より

…遊星とも呼ばれる。内側から水星,金星,地球,火星,木星,土星,天王星,海王星,冥王星の9個があり,その多くは衛星をもつ。また火星と木星の間には数多くの小惑星があり,惑星に集積し切れなかったなごりの物体群と考えられている。…

※「金星」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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