2006年に登録されたオマーンの世界遺産(文化遺産)。アラビア半島東端のオマーンは国土の8割を砂漠が占めているが、この国には現在も稼動する約3000ヵ所の「ファラジ」と呼ばれる灌漑施設があり、オマーンの人々は古代から、この灌漑施設を使って生活用水を確保し、ナツメヤシの畑の灌漑と栽培を行ってきた。地下の水源から数キロメートル先の集落やナツメヤシ畑まで水路を掘り、わずかな高低差を利用して水を供給するという、たいへん高度な土木技術を利用した持続的システムで、併せて、たいへん厳格な規則のもとで貴重な水資源を分かち合う文化を作りあげた。その起源は紀元前2500年頃にさかのぼるともいわれているが定かではない(紀元後500年のファラジの遺跡は確認されている)。世界遺産に登録されたアフラージュは、同国のアル・ダヒリーヤ、アル・シャルキヤ、アル・バティナ地方にある、最も古い5つのファラジである(「アフラージュ」は「ファラジ」の複数形)。1970年代以降、豊富なオイルマネーを背景に水道のインフラが急速に整備されたオマーンだが、ファラジの誇る豊富な水量は農業には欠かせないものとして、今日においても多数活用されている。しかし、多くのファラジは地下水位の低下によって危機にさらされているともいわれている。◇英名はAflaj Irrigation Systems of Oman