改訂新版 世界大百科事典 「アラコウモリ」の意味・わかりやすい解説
アラコウモリ
気が荒く,肉食性の翼手目アラコウモリ科アラコウモリ属Megadermaに属する哺乳類の総称。外形がチスイコウモリに似るので,チスイコウモリモドキfalse vampirebatの名がある。東南アジアに2種がいる。インドアラコウモリ(オオアラコウモリ)M.lyraはアフガニスタンからマレーシア,スリランカ,中国南部まで分布する。体長7.5~9cm,前腕長6.5~7.5cm,体重40~60g前後。耳介は大きく先が丸く,左右の耳介は頭頂で合一する。耳介の前方にある耳珠は長くて先が2葉に分かれる。吻(ふん)部に三角形の鼻葉がある。尾はまったくなく,背面は灰褐色。乳頭は他のコウモリと同様に胸部に1対あるほか,乳頭が発達しない擬乳頭が下腹部に1対ある。暗くなってからねぐらを離れ,ふつうねぐらから1~2kmのところで採食する。クモ,カエル,トカゲ,魚類,鳥類,ネズミ,他種のコウモリなどを地上3m付近をゆっくりと飛翔(ひしよう)しながらとらえる。とらえた食物は休息地に運んで食べるが,まず血を吸ってから肉を食べる。インドでは交尾期は11月ごろで,妊娠期間は150~160日,ふつう1産1~2子を6月ごろ出産する。インドからフィリピン,モルッカ諸島まで分布するマライアラコウモリ(コアラコウモリ)M.spasmaは小型で前腕長5~6cm,体重23~28g。体背面は青灰色。前種ほど肉食性は強くなく,バッタ,ガなどを好む。
執筆者:吉行 瑞子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報