改訂新版 世界大百科事典 「アラバマ号事件」の意味・わかりやすい解説
アラバマ号事件 (アラバマごうじけん)
The Alabama Case
アラバマ号は,アメリカ南北戦争に際して中立の地位にあったイギリスの民間造船所に,南軍が発注し,1862年に建造された。建造中におけるアメリカ=北軍の警告と抗議にもかかわらず,建造後同船はポルトガル領アゾレス諸島で武器,弾薬,兵員の供給を受け,64年に撃沈されるまで北軍に属する商船の捕獲に従事し,北軍に多大の損害を与えた。戦後,アメリカの損害賠償請求により,71年の英米のワシントン条約によって仲裁裁判に付せられ,翌72年イギリスの中立義務違反が認定された。本件により,交戦国の海軍作戦のために用いる意図のある軍艦を中立国領域内で建造または艤装(ぎそう)しえないことが認められ,ワシントン条約の定める規則は1907年の〈海戦ノ場合ニ於ケル中立国ノ権利義務ニ関スル条約〉に大部分とりいれられた。
→中立
執筆者:芹田 健太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報