金属は水溶液に浸した場合、陽イオンになって水溶液中に入ろうとする傾向がある。この傾向をイオン化傾向という。この傾向の大きな金属から小さな金属へと並べたものをイオン化列といい、また電気化学列ともいう。水素も金属と同等に取り扱う。ただしこの傾向は、同じ金属でも水溶液中にその金属イオンがあれば、その濃度によって変わる。そのため、違った金属の間でこの傾向を比較する場合には、同じ条件の下で比べなければならない。この理由のために、イオン化傾向の定量的比較には標準電極電位が使われる。イオン化列で前にある金属ほどイオンになりやすい(酸化されやすい)から、その金属よりもイオン化傾向の小さな金属のイオンの水溶液に浸すと、イオンの置換反応をおこす。たとえば、亜鉛と銅、銅と銀とでは、
Zn+Cu2+―→Zn2++Cu
Cu+2Ag+―→Cu2++2Ag
のように置換する。たとえば硝酸銀水溶液に銅片を浸すと銅片の一部が溶けて銀が析出してくる。同じように水素イオンが置き換えられると、水素ガスを発生する。
Zn+2H+―→Zn2++H2↑
これを一般的にいえば「水素よりもイオン化傾向の大きな金属は、希酸に溶けて水素を発生する」。逆に「水素よりもイオン化傾向の小さい金属は、普通の希酸には溶けない」。しかし金属が酸によって酸化される場合にはその酸に溶けることもある。おもな金属のイオン化列は、イオン化傾向の大きい順に並べると次のようである。カリウムK、カルシウムCa、ナトリウムNa、マグネシウムMg、アルミニウムAl、マンガンMn、亜鉛Zn、クロムCr、鉄Fe、カドミウムCd、コバルトCo、ニッケルNi、スズSn、鉛Pb、(水素H)、銅Cu、水銀Hg、銀Ag、金Au。
[戸田源治郎・中原勝儼]
金属が電子を放出してイオンとして溶液に溶け込もうとする傾向,すなわち,イオン化傾向の大小を金属について順番に並べた列をいう.ボルタ列ともいう.おもな金属についてのイオン化列は,次のとおりである.
Li > K > Ba > Ca > Na > Mg > Al > Zn > Fe > Cd > Co > Ni > Pb > (H) > Cu > Ag > Hg > Au.
左のほうにあるものほどイオン化傾向が大きく,酸化されやすく,また電子親和力は小さい.イオン化列の順序は定性的なものであるが,標準電極電位によりこの序列を定量的に表すことができる.[別用語参照]電気化学列
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…溶媒が水のときの主要な元素のイオン化傾向の順は, K>Ca>Na>Mg>Al>Zn>Cr>Fe>Cd>Co>Ni>Sn>Pb>(H)>Cu>Hg>Ag>Pt>Auである。このような序列をイオン化列ionization seriesまたは電気化学列electrochemical seriesという。水素よりもイオン化傾向の大きい金属を酸の希薄水溶液中に入れると,その金属は自発的に溶けて水素ガスが発生する。…
※「イオン化列」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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