改訂新版 世界大百科事典 「イソガニ」の意味・わかりやすい解説
イソガニ
Hemigrapsus sanguineus
内湾の小石の多い磯にごくふつうに見られる甲殻綱イワガニ科のカニ。甲幅3cmに達し,甲の輪郭はほぼ四角形。甲面はわずかに膨れるが,甲域は不明りょう。額は幅広く板状に張り出し,中央部がややへこむ。甲の前側縁には二つの深い切れ込みがある。はさみ脚は左右同大で,雄では両指の付け根の部分に膜質の袋状構造があり,味覚に関与するといわれている。甲には青緑色と濃紫色の細かい斑点があり,はさみ脚には濃紫色の丸い斑紋,歩脚には同色の横縞がある。色彩型は安定しており,分類形質として役だつ。初夏から盛夏にかけて抱卵し,孵化(ふか)したゾエア幼生は約1ヵ月間で稚ガニになる。北海道から九州,韓国,中国,台湾のほか,東南アジア,オーストラリアからも知られている。内湾の干潟あるいは汚れの進んだ磯にはケフサイソガニH.penicillatusが見られる。雄の掌部内面に軟らかい毛が密生している。一様に暗灰緑色で,歩脚に横縞はない。日本から韓国,中国,台湾まで分布している。
執筆者:武田 正倫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報