イタチガヤ(英語表記)Pogonatherum crinitum(Thunb.)Kunth

改訂新版 世界大百科事典 「イタチガヤ」の意味・わかりやすい解説

イタチガヤ
Pogonatherum crinitum(Thunb.)Kunth

日当りのよい山の斜面に生える小型のイネ科多年草和名の鼬茅(いたちがや)は黄褐色の毛の生えた穂をイタチに見立てた。茎は細いが硬く,密生して株を作る。茎の高さは10~20cm,節に毛があり,基部に硬い鱗片がある。葉は茎の節につき,短い披針形で長さは5cm以下,幅は4mmほどで,鮮緑色をしている。夏から秋にかけて,1個の穂状の花序が茎の頂に出る。穂は短い円柱状で,立ち,長さは2cm前後,白い毛が密生するが,これに混じる芒(のぎ)が黄褐色で全体にきつね色に見える。長さ2mm以下の小さい小穂が密生している。アジアの暖帯から熱帯に広く分布し,インドマレーシア,中国の中南部から日本では本州の和歌山県以西,四国,九州,琉球にある。全草を中国では薬用とし,解熱などに用いる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イタチガヤ」の意味・わかりやすい解説

イタチガヤ
いたちがや / 鼬茅
[学] Pogonatherum crinitum (Thunb.) Kunth

イネ科(APG分類:イネ科)の小形の多年草。稈(かん)は株立ちして硬く、高さ10~25センチメートル。8~10月、長さ2~3センチメートルの分枝しない花序をつける。小穂は2小花をもち対(つい)をなして花序の軸につく。第2包穎(ほうえい)と第4穎に長い直立した黄金(こがね)色の芒(のぎ)をもつ。紀伊半島以西から沖縄にかけて山野の切り通しなどに生え、中国、東南アジア、インドに分布する。名は黄金色をした花穂の形と色をイタチの尾に見立てたもの。

[許 建 昌 2019年8月20日]

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