日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ウィルソン(Robert Woodrow Wilson)
うぃるそん
Robert Woodrow Wilson
(1936― )
アメリカの電波天文学者。ヒューストンに生まれる。ライス大学を1957年に卒業後、カリフォルニア工科大学大学院に進み、電波天文学を研究し、1962年博士号を取得した。1963年ニュー・ジャージー州ホルムデルのベル研究所の技術スタッフとなり、1976年に同研究所の電波物理学部門の研究部長の職についた。また1978年からはニューヨーク州立大学の教授を務めた。
ベル研究所で2年先輩のペンジアスとともに衛星通信の障害となる雑音源をつきとめるため、電波望遠鏡と受信機のテストを行っていた。そこで彼らは、1964年に宇宙の全方向からくる波長約7センチメートル、温度約3K(マイナス270℃)の宇宙背景放射Cosmic Microwave Background Radiation(CMB。宇宙マイクロ波背景放射、宇宙黒体放射、3K放射ともいう)を発見した。プリンストン大学のディッケRobert Henry Dicke(1916―1997)に観測結果を連絡したところ、ディッケはそれが宇宙の創生期におきたビッグ・バンの名残(なごり)ではないかと予測した。この発見は、膨張する宇宙の証拠とみなされ、以後、宇宙論は大いに盛り上がりをみせた。この業績に対して、1978年にペンジアスとともにノーベル物理学賞が与えられた。低温物理学のカピッツァとの同時受賞であった。
[編集部]