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低温物理学 ていおんぶつりがくlow-temperature physics

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

低温物理学
ていおんぶつりがく
low-temperature physics

絶対零度に近い極低温に関する技術 (冷却法や温度測定法) ,極低温における物質の性質などを研究する物理学の分野。極低温では物質を構成する粒子の熱運動が小さいので,静的で秩序立った状態になり,量子効果が現れる。

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出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

低温物理学
ていおんぶつりがく
low temperature physics

低温度領域における物性を研究する物理学の分野。低温範囲を示す温度領域は、科学・技術の進展とともに歴史的に変わってきている。現在、物理学の分野では、液体ヘリウムの沸点である絶対温度4.2K(零下269℃、1気圧下)よりも低い温度領域をさすものと考えてよい。1908年、オランダカマーリン・オネスは、ヘリウムガスの液化に成功、ついで1911年に水銀が4.25K以下で超伝導になることを発見した。これらの発見が20世紀の新たな学問「低温物理学」の幕明けとなった。この電気抵抗がある温度以下で突如としてゼロになる「超伝導」現象も、のちに発見された液体ヘリウムの粘性が2.17K以下でゼロとなる「超流動」現象も、室温付近ではけっして観測されない不可思議な現象である。これらは本来、微視的ミクロ)な原子的過程であるはずの量子効果が、巨視的マクロ)な量子として観測できるようになった低温特有の現象として理解できる。
 微視的な原子的過程の現象であるはずの量子効果が、低温になると、なぜ、巨視的な現象として直接観測できるのであろうか。固体が室温からしだいに冷やされて、1Kの低温になったことを考えよう。この固体の中の原子または分子が受け取る熱エネルギーは、kTkはボルツマン定数、Tは絶対温度)であるから、1Kに冷やされた固体の中の原子または分子の受け取る熱エネルギーは、室温のときのほぼ300分の1にすぎない。ということは、低温では室温のときの激しい熱振動が消えて原子や分子は300×300倍も波長の長いゆっくりとした熱振動しかしていないことになる。このような条件の下では、量子現象が原子的過程の個々ばらばらの現象としてではなく、微視的な原子的過程が原子または分子の集団の協力現象として発生する。したがって、これを巨視的な手段によって観測することが可能になる。これは次のようにいいかえてもよい。熱振動によるじゃまが入らなければ、本来、量子効果も協力現象によって巨視的に観測されるはずである。ところが、ある温度よりも高温になると、熱振動のじゃまが入って、原子的過程の協力現象である量子効果を熱振動によって個々ばらばらな原子的過程にしてしまうために、巨視的には観測できなくなる。そしてこの境目の温度を「臨界温度」という。
 原子・分子の熱振動とは、量子効果を測定する立場からは熱雑音である。したがって、1Kは室温に比べて熱雑音は電圧で測定する場合300倍も小さい世界である。「低温物理学」では、新たな巨視的な量子現象の発見が研究の課題であると同時に、すでに発見されている量子現象を利用して、より低温領域を開発し、または超精密測定技術を開発する。さらにこれらを総合して超低温領域の物理学を切り開くことが具体的に行われている。これが「低温物理学」の他の分野とは異なった特徴である。たとえば、ヘリウムの同位元素であるヘリウム3(3He)の液体を20ミリK(1ミリKは1000分の1K)程度から30気圧以上に静かに断熱圧縮すると、2ミリK程度の低温が得られる。このようにして、3Heの超流動が発見された(2.7ミリK、1972)。また、核スピンの量子効果、核断熱消磁法を用いて、20マイクロK(1マイクロKは100万分の1K)付近を実現した(1981)。さらに、低温の20ナノK(1ナノKは10億分の1K)領域の低温は、アメリカのコロラド大学と国立標準技術研究所が共同運営する宇宙物理学複合研究所(JILA=Joint Institute for Laboratory Astrophysics)のルビジウム87(87Rb)の核のレーザー冷却によって実現された(1995)。[渡辺 昂]
『小林俊一・大塚洋一著『物理工学実験7 低温技術』第2版(1987・東京大学出版会) ▽P. V. E. McClintock他著、藤田敏三・前野悦輝・大林康二訳『低温物理入門』(1988・丸善) ▽益田義賀著『超流動と超伝導』(1989・丸善) ▽渡辺昂著『超流動から超伝導へ』(1991・大月書店)』

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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