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宇宙マイクロ波背景放射 うちゅうまいくろははいけいほうしゃ cosmic microwave background radiation

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知恵蔵2015の解説

宇宙マイクロ波背景放射

宇宙を一様に満たす2.73K(ケルビン)の黒体放射。1965年に発見され、ビッグバン宇宙論の最も重要な観測的証拠とされている。初期宇宙のプラズマ状態では放射は陽子や電子などの荷電粒子と頻繁に衝突を繰り返し、放射と物質は一体となって運動していた。温度が約4000Kに下がった時、陽子が電子を捕獲して中性水素原子を作った結果、放射はもはや物質と衝突せずまっすぐ進めるようになる。この現象を物質と放射の脱結合、あるいは宇宙の晴れ上がりと呼ぶ。この時の放射が宇宙膨張によって波長が伸びて、現在2.73Kの放射として観測されたのが宇宙マイクロ波背景放射。密度ゆらぎに起因する温度ゆらぎは10万分の1程度のゆらぎで、天球上でどの角度スケールにどのくらい大きなゆらぎがあるかは宇宙の構造によって決まり、それを観測することでハッブル定数密度パラメータ宇宙定数についての制限を得ることができる。

(谷口義明 愛媛大学宇宙進化研究センターセンター長 / 2008年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵2015」
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デジタル大辞泉の解説

うちゅうマイクロは‐はいけいほうしゃ〔ウチウ‐ハハイケイハウシヤ〕【宇宙マイクロ波背景放射】

宇宙背景放射

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編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:曽根脩
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

宇宙マイクロ波背景放射
うちゅうまいくろははいけいほうしゃ
Cosmic Microwave Background RadiationCMB

宇宙を一様等方に満たしている宇宙開闢(かいびゃく)の名残(なごり)の放射。単に「宇宙背景放射」とよばれることもある。また、そのスペクトルは温度約2.73K(ケルビン)の黒体放射で与えられるので、3K放射ともよばれる。
 宇宙マイクロ波背景放射は、1964年にアメリカのベル電話研究所のペンジアスとR・W・ウィルソンによって衛星通信用ホーンアンテナの雑音測定実験中に発見されたが、その存在は1948年にガモフによって予言されていた。当時、ガモフは約100億年前に高温の火の玉から始まったというビッグ・バン宇宙論を提唱した。それによれば火の玉は宇宙の膨張とともに冷却し現在3Kの黒体放射としてその名残を残すことになる。ペンジアスたちの発見はその後の宇宙論研究の隆盛をもたらした。この功績によりペンジアスとウィルソンは1978年ノーベル物理学賞を受賞した。
 宇宙マイクロ波背景放射は宇宙をほぼ完全に一様等方に満たしているので、宇宙の基準座標系の役割を果たすことになる。実際、宇宙マイクロ波背景放射には0.1%程度の双極子型非等方性があるが、これはわれわれの銀河が宇宙マイクロ波背景放射に対し毎秒約600キロメートルの速度で運動していることによる。またすべての角度スケールにわたって、強度0.001%程度のゆらぎが存在している。これは、膨張宇宙のなかで銀河や銀河集団を形成する密度ゆらぎに伴うものであり、そのゆらぎが宇宙開闢の時期に存在していたことを示すものである。
 このような宇宙マイクロ波背景放射のゆらぎは、1990年代に宇宙マイクロ波背景放射観測衛星であるCOBE(コービー)衛星、2000年代に入ってWMAP(ダブリューマップ)衛星によって精密な測定がなされ、インフレーション理論に基づく予言とよく一致する結果が得られている。また、ゆらぎの強さの角度依存性から、宇宙の平均物質密度とその構成についての情報が得られている。その結果、宇宙の物質の大部分は通常の物質以外の暗黒エネルギーおよび暗黒物質(ダークマター)であることが判明した。このように、宇宙マイクロ波背景放射はビッグ・バン宇宙論やインフレーション宇宙論の最大の観測的証拠を与えるとともに、われわれの宇宙を理解するうえでもっとも定量的なデータを提供している。[高原文郎・山崎 了]
『梅村雅之・吉岡諭編『スーパーコンピューターが解き明かす宇宙の進化』(1991・恒星社厚生閣) ▽ジョージ・スムート、ケイ・デイヴィッドソン著、林一訳『宇宙のしわ――宇宙形成の「種」を求めて』(1995・草思社) ▽ジョセフ・シルク著、戎崎俊一訳『宇宙創世記――ビッグバン・ゆらぎ・暗黒物質』(1996・東京化学同人) ▽科学朝日編『天文学の20世紀』(1999・朝日新聞社) ▽杉山直著『岩波講座 物理の世界 地球と宇宙の物理5 膨張宇宙とビッグバンの物理』(2001・岩波書店) ▽寿岳潤・パリティ編集委員会編『宇宙論はいま』(2003・丸善) ▽二間瀬敏史・池内了・千葉柾司編『宇宙論〈2〉――宇宙の進化』シリーズ現代の天文学3(2007・日本評論社)』

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