ビッグバン(読み)びっぐばん(英語表記)Big Bang

翻訳|Big Bang

デジタル大辞泉 「ビッグバン」の意味・読み・例文・類語

ビッグ‐バン(big bang)

宇宙の始めの大爆発。ガモフらが唱えた説で、約138億年前に起こった大爆発により、超高温・超高密度の状態から急膨張しはじめ、急激な温度降下の過程で素粒子を生成し、今日の宇宙ができたとする。膨張宇宙宇宙背景放射元素の存在比などが証拠とされる。
1986年に実施された英国証券市場制度の大改革。手数料自由化、取引所会員権の開放などに代表される金融・証券自由化政策を骨子とする。転じて抜本的改革等をいう。
平成8年(1996)に橋本龍太郎首相が具体化を指示した、銀行・証券・保険の相互参入の促進など、護送船団方式によって守られてきた金融システムに対する改革案のこと。2になぞらえた呼称。金融ビッグバン日本版ビッグバン

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精選版 日本国語大辞典 「ビッグバン」の意味・読み・例文・類語

ビッグ‐バン

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] big bang )
  2. 宇宙の初期、約百数十億年前に起こった大爆発。一九四八年、ガモフらによって提唱された。宇宙はこの時から膨張を開始したとされる。
  3. 一九八六年一〇月に実施された、イギリスの証券市場制度改革の通称。また、これになぞらえた日本の金融市場の改革。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビッグバン」の意味・わかりやすい解説

ビッグ・バン
びっぐばん
Big Bang

宇宙が火の玉として始まる瞬間を表すことば。ビッグ・バンは、宇宙の姿は永遠に不変であるとする「定常宇宙論」の提唱者であるF・ホイルが、ベルギーのG・ルメートルの「宇宙は原始原子として生まれた」という理論をラジオ番組で紹介したとき、揶揄(やゆ)するような表現として使ったことばである。しかし、このことばはこの理論を的確に表現していることから、よく使われるようになった。1948年、G・ガモフらは、ルメートルの仮説を発展させ、宇宙に存在する元素の起源を説明するために、宇宙は火の玉で始まったという理論を提唱した。

 今日、ビッグ・バンとは、ルメートルの理論ではなくガモフの提唱した火の玉宇宙の始まりの瞬間を表すことばとなった。1929年、E・ハッブルによって宇宙は膨張していることが発見され、時間的にさかのぼれば宇宙は物質の密度がきわめて高い状態から始まったことになることがわかった。また、一般相対性理論の一つの解として宇宙が膨張することも、1922年、A・フリードマンによって、また、1927年、ルメートルによって示されていた。ガモフは原子核物理学の知識に基づき、宇宙初期では物質密度が高いだけでなく、もし温度もきわめて高かったとすれば、核融合反応により現在宇宙に存在するすべての元素が合成されるはずであるという、火の玉仮説を提唱した。この理論は、アルファーRalph Alpher(1921―2007)、ベーテBethe、ガモフGamowという3人の連名で発表され、著者の頭文字から、αβγ(アルファベータガンマ)理論とよばれている。高温高密度の中性子ガスで始まった宇宙では、中性子が崩壊して生じた陽子に中性子がくっつき軽い原子核がつくられ、さらにその原子核が次から次へと中性子捕獲とβ崩壊を繰り返しながらウラニウムに至るすべての元素が合成されるとしたのである。しかし宇宙初期で合成されるのは、水素、ヘリウムリチウムなどの軽元素のみであることが、のちの理論や観測によって明らかになった。

 しかし、宇宙が火の玉で始まった証拠である宇宙マイクロ波背景放射が、1965年に発見され、定常宇宙論は否定され、ビッグ・バン理論は不動のものとなった。

 さらに「宇宙が膨張し温度が下がるにつれガスが固まり、恒星、銀河、銀河団など宇宙の構造がつくられていく」というシナリオは、多くの天文学的観測によって裏づけられ、今日の宇宙の標準理論となっている。

佐藤勝彦 2017年5月19日]

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改訂新版 世界大百科事典 「ビッグバン」の意味・わかりやすい解説

ビッグバン
big bang

宇宙のはじめの大爆発をいう。宇宙が,今から約150億年前に起こった大爆発によって生まれたとする宇宙起源説で,火の玉宇宙論とも呼ばれる。現在広く受け入れられている標準的膨張宇宙理論(標準宇宙論)は,ビッグバンを起源とするものである。そのため,しばしばビッグバン宇宙論は標準宇宙論と同一の意味でも使われる。

 現在,宇宙が膨張していることは,遠方の銀河ほど大きな速度でわれわれの銀河系から遠ざかっていることからわかっている。その速度は100万光年離れた銀河に対して約15km/sである。この事実から,宇宙は過去にさかのぼればさかのぼるほど,高密度であり,約150~200億年前には密度が無限に高かったと考えられる。ビッグバン宇宙論は,宇宙の初期がこのように高密度であっただけでなく,同時に高温でもあったとする理論である。十分な高温高密度状態では,物質は原子核を構成する陽子や中性子に,ばらばらに分解した状態にある。宇宙の初期がこの状態にあると,それが急激に膨張し冷却する過程で,熱核反応によって核融合が起こり,さまざまな元素が合成される。実際の宇宙では,膨張速度と物質密度との関係から,宇宙の誕生後数百秒で熱核反応が終わり,ほとんどが陽子として残り,ヘリウムなどの軽元素がいくらか合成されたと考えられる。その後,宇宙はおもに陽子と電子からなる熱いプラズマ状態にあった。プラズマ状態では,光が物質と十分速く散乱・吸収・放出反応を繰り返しているため,この時期の宇宙は非常に不透明であった。約10万年後,宇宙の温度と密度は十分下がり,光はもはや物質をプラズマ状態に保つほど十分反応せず,陽子と電子は結合して中性の水素原子を形成し,宇宙は光に対して透明になった。これを宇宙におけるプラズマの再結合という。中性化した物質は,重力的に不安定となり,小さな密度のゆらぎが大きく成長できるようになる。こうして銀河や第1世代の星ができ,現在の宇宙の姿へと進化したと考えられている。

 ビッグバンを宇宙の起源として最初に提唱したのは,ロシア生れのアメリカ人物理学者G.ガモフであり,1946年のことである。しかし,そのころはまだ,ビッグバンの直接の証拠は観測されておらず,少数の人々を除いて,ガモフの理論は,あまり着目されなかった。しかし,64年,アメリカの物理学者ペンジャスArno A.PenziasとウィルソンRobert W.Wilsonによって,3Kという非常に低温の光(宇宙背景放射)が宇宙を満たしていることが発見され,同時に,ピーブルスP.J.E.PeeblesやディッケR.H.Dickeらの理論物理学者によって,これが熱い初期宇宙の痕跡であることが明らかにされ,さらに,理論的に予見される宇宙初期の元素合成量が,観測事実とよく一致することが確認されてビッグバン理論は確立した。

 最近,物質のより基本的な構造が明らかにされるに従って,宇宙論においても元素合成の時代よりさらにさかのぼった高温高密度の時代のようすが研究されており,物質そのものの起源やビッグバンそのものの起源といったより哲学的な問題が,物理の問題として解明されるのも夢ではなくなってきている。
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百科事典マイペディア 「ビッグバン」の意味・わかりやすい解説

ビッグバン(宇宙)【ビッグバン】

宇宙開闢(かいびゃく)に起こった大爆発。宇宙は今から150億年前に起こった大爆発によって生まれたとする宇宙起源説で,火の玉宇宙論ともいわれる。ビッグバン宇宙論は現在最も広く受け入れられている標準的膨張宇宙論である。 生まれたばかりの宇宙は高温高密度状態で,物質は空間的に一様で単調な素粒子からなっていた。それが急激に膨張し冷却する過程で熱核反応によって核融合が起こり,種々の原子核が作られた。熱核反応は宇宙誕生後数百秒で終わり,宇宙は主に陽子と電子からなる熱いプラズマ状態になった。約10万年後,宇宙の温度と密度は十分下がり,電子と陽子は結合(プラズマの再結合)して中性の水素原子を形成し,いろいろな原子ができた。中性化した物質は,相互に働く重力によって,初期に存在した密度のゆらぎはしだいに成長し,ついに銀河,銀河団,超銀河団といった巨大なスケールの宇宙の大局構造を作り,銀河中には恒星が生まれ,現在の宇宙の姿へ進化したと考えられる。 ビッグバン宇宙論は,1946年G.ガモフが提唱。当初は支持者が少なかったが,1964年,3Kという非常に低温な電波(宇宙背景放射)が宇宙を満たしている事実が発見され,これがビッグバン宇宙論と整合する初期宇宙の痕跡であることが明らかになった。さらに,理論的に予想される初期宇宙の元素合成量が観測事実とよく一致することが確認され,ビッグバン宇宙論は確立した。ビッグバン宇宙論には理論的に解決できない地平線問題,平たん性問題があるが,1981年A.H.グース,佐藤勝彦は,開闢時の宇宙は高温で極めて大きなエネルギーをもつ真空で,これが初期に相転移を起こし,何百桁(けた)もの急激な膨張を行ったというインフレーションモデルを提唱,学界から広く受け入れられている。
→関連項目宇宙線宇宙論ガモフ日本版ビッグバン

ビッグバン(経済)【ビッグバン】

1986年10月,サッチャー政権によって行われたイギリス証券取引所の大改革を,宇宙のビッグバン(大爆発)になぞらえてこう呼ぶ。市場の効率性や流動性を増加させるため,売買手数料の自由化,ジョバー・ブローカー制度の廃止,証券取引所会員の外部資本への開放などが行われた結果,資本力のあるマーチャント・バンク(国際金融業者)が証券業務に参入するなど,競争が激化し,ロンドン市場が強力な国際金融センターとなる基盤ができあがるきっかけとなった。→日本版ビッグバン
→関連項目金融サービス法ロンドン株式取引所

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世界大百科事典(旧版)内のビッグバンの言及

【銀行法】より

…そのような動きの中で,日本の従来の金融業に対する規制の強さは諸外国の金融機関の嫌うところとなり,東京市場が世界の金融市場の中心の一つたる地位を占められなくなる恐れが深刻化した。近時の銀行法をめぐる規制緩和の動きはそのような事態に対する政策的な対応を現すものであるが,なおいっそうの規制緩和を目ざす,いわゆる金融ビッグバンの動きが具体化しつつあり,銀行法は今後ともそのような流れと無縁ではありえない。銀行【来生 新】。…

【金融機関】より

…蔵相の諮問機関である証券取引審議会,金融制度調査会,保険審議会などは,首相の改革プランについて最終答申を1997年6月に出し,相互参入の促進,新たな金融商品の導入(金融派生商品の自由化等),コスト低減(株式取引手数料の自由化等),金融システムの健全性の確保を柱として,21世紀初めまでの改革の日程も打ち出した。これらの改革を総称して〈日本版ビッグバン〉という(イギリスのロンドン株式取引所のビッグバン=大改革になぞらえたもの)。 この間に1990年代初めのバブル経済崩壊以後,住宅金融専門会社の破綻(〈住宅金融〉の項参照),都市銀行の一つ北海道拓殖銀行の破綻(1997),大手証券会社の山一証券の自主廃業決定(1997)など,日本の金融制度をゆるがす事態が続発しており,預金保険機構の強化がはかられ(〈預金保険〉の項参照),また大蔵省から機能を分離した金融監督庁が98年6月に設立された。…

【ロンドン株式取引所】より

…組織形態は会員制の自治団体方式をとっており,法人格は有しない。1986年のいわゆる〈ビッグバン〉(後述)以前には,会員はすべて個人に限られ,顧客の売買注文を取り次ぐブローカーbrokerと,特定の銘柄につき自己勘定による売買を専門とするジョッバーjobberに分かれ,両者の兼業は禁止されていた。すなわちジョッバーは一般顧客からの売買注文を受けることができず,売買の相手先はブローカーないし他のジョッバーであった。…

【宇宙】より

… こうして50年代を境に,その後の観測や研究は,天文学ばかりでなく人間の宇宙観,自然観をそれ以前のものとまったく違うものにした。宇宙はおよそ200億年以前にビッグバンで爆発的に開闢したものであり,それ以来続いている膨張の中で元素も恒星も銀河も生まれ進化してきたのであり,われわれ自身もまさに宇宙進化の産物であり宇宙の一部であるという進化宇宙論の考えもそんな一例である。
【宇宙の現状】

[宇宙の階層構造]
 観測から知られる宇宙の特徴はいろいろあるが,その一つの側面は宇宙の階層的構造である。…

【天文学】より

…さらにスペースシャトルを利用してスペース望遠鏡やスペース天文台を運営する時代になりつつある。【藪内 清】
【最近の天文学】

[宇宙論]
 膨張宇宙は,遠い銀河ほど遠ざかる速度が比例的に増大するE.ハッブルの関係式が一様等方宇宙に対するアインシュタイン方程式のフリードマン解と一致することにより,観測的にも理論的にも多くの支持を得ていたが,1965年アメリカのペンジアスA.PenziasとウィルソンR.Wilsonとが3Kの宇宙背景放射を発見して,ビッグバンと称する超高温超高密度の宇宙初期の大爆発モデルが確立した感がある。ビッグバンの初期は素粒子の宇宙で,ほぼ等量ある物質,反物質は光速で宇宙が膨張するにつれて重い粒子から対消滅し,余剰が物質として残るが放射優勢の宇宙となる。…

※「ビッグバン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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