ウェルズ(Orson Welles)(読み)うぇるず(英語表記)Orson Welles

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ウェルズ(Orson Welles)
うぇるず
Orson Welles
(1915―1985)

アメリカの映画監督、俳優。ウィスコンシン州ケノーシャ生まれ。1931年、高校を卒業してアイルランドに旅行し、ダブリンのゲイト劇場で初舞台を踏んだ。帰米後本格的に演劇活動に入り、1937年にルーマニア出身の俳優ジョン・ハウスマンJohn Houseman(1902―1988)らとマーキュリー劇団を結成、ラジオ番組などにも進出した。1938年10月30日、CBSラジオでH・G・ウェルズ原作『宇宙戦争』を脚色して放送したとき、冒頭で臨時ニュースの形式をとったために、火星人襲来の報を真に受けた多くの市民がパニック状態になり、大きな話題となった。その奇才ぶりに着目した映画会社RKOが招いてつくらせたのが、ウェルズの監督、共同脚本、主演による『市民ケーン』(1941)で、制作時は25歳であった。アメリカの新聞王の専横ぶりと満たされぬ精神的孤独を描いたこの作品は、大胆なドラマ構成と斬新(ざんしん)なカメラ操作による画面構成で映画史上に残る傑作となった。その後、『マクベス』(1948)、『黒い罠(わな)』(1958)、『審判』(1962)のほかに、多くの日本未公開作品をつくったが、『市民ケーン』に勝る作品を生み出してはいない。その異才が映画会社の商業主義の枠に収まりきれないためだろう。彼はまた、堂々たる風格を生かした性格俳優としても一流評価を得、自らの監督作品の多くに主演したほか、『第三の男』(1949)などにも出演している。

[品田雄吉]

資料 監督作品一覧

市民ケーン Citizen Kane(1941)
偉大なるアンバーソン家の人々 The Magnificent Ambersons(1942)
オーソン・ウェルズ IN ストレンジャー The Stranger(1946)
上海から来た女 The Lady from Shanghai(1947)
マクベス Macbeth(1948)
オーソン・ウェルズのオセロ The Tragedy of Othello : The Moor of Venice(1952)
秘められた過去 Mr. Arkadin(1955)
黒い罠 Touch of Evil(1958)
審判 The Trial(1962)
オーソン・ウェルズのフォルスタッフ Falstaff/Chimes at Midnight(1966)
オーソン・ウェルズのフェイク F for Fake(1975)

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