ウエルメードプレー(その他表記)well-made play

デジタル大辞泉 「ウエルメードプレー」の意味・読み・例文・類語

ウエルメード‐プレー(well-made play)

《うまく作られた劇の意》洒脱しゃだつせりふ、巧妙な構成、類型的な登場人物の取り合わせによる戯曲

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ウエルメードプレー」の意味・わかりやすい解説

ウェルメード・プレー
well-made play

フランス語ではpièce bien faiteといい,文字どおりには〈よく作られた戯曲〉を意味するが,普通は,緊密な構成をもち,人物の個性よりも巧みに組み立てられた状況によってプロットが進行する戯曲を指す。19世紀のフランスで確立し,スクリーブEugène Scribe,V.サルドゥー,A.デュマ(子),オージエÉmile Augierなどをおもな書き手とする。おおむね,過去の秘密がしだいに明らかになって中心人物の現在の生活に決定的な影響を及ぼすという物語を,観客を不安がらせたり驚かせたりしながら進行させ,また,結末既成道徳観に合致するのが普通である。近代市民階級をおもな観客とする保守的な劇形式で,観客自身になじみがある日常生活を描くのに特に適する。戯曲の密度を重視するため,登場人物の数,場面,劇の事件の所要時間は限られることが多く三統一法則を守ることもまれではない。過度の秩序性のゆえに,イプセン,バーナード・ショーなど近代リアリズムの劇作家には人工的で不自然だとして非難された。現在でもこの言葉は必ずしもよい意味に用いられないが,現代商業演劇の多くは,メロドラマ,客間喜劇,笑劇,スリラー劇など,内容は異なってもいずれもウェルメード・プレーの作劇術によっている。それは本質においては,17世紀のフランス古典悲劇に発する,西洋近代劇の最も基本的な作劇術であり,リアリズム作家の作品にも実はひじょうにしばしば認められる。
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知恵蔵 「ウエルメードプレー」の解説

ウェルメード・プレー

巧みに作られた劇。フランスのブールバール演劇英国の風習喜劇以来、現代でもブロードウェーウエストエンドでヒットする劇の多くはこの形式で書かれている。現代の劇作家では、ニール・サイモン、ピーター・シェファーの戯曲などはその好例。類型的で新鮮味に欠ける芝居という批判的な意味合いで使われる場合もある。1980年代以降、日本でも加藤健一事務所などが英米でヒットしたウェルメード・プレーを盛んに上演している。90年代からは三谷幸喜、飯島早苗(自転車キンクリート)、鈴木聡(ラッパ屋)、マキノノゾミ(劇団M.O.P.)など、この系統の書き手が注目を集めている。

(扇田昭彦 演劇評論家 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

世界大百科事典(旧版)内のウエルメードプレーの言及

【フランス演劇】より

…それはまた,パリ周縁の劇場の成立を促し,小劇場運動とともに,パリの劇場地図を60年代に大きく変えた。モンテルランらの新作上演やシャロン,イルシュらによる活力ある喜劇の職人芸によってなお主流を誇ってきたコメディ・フランセーズをかっこ付きの〈伝統の牙城〉として孤立させ,ベルスタイン,パニョルからアシャール,ルッサン,アヌイを経て,カモレッティ,ポアレに至るウェルメード・プレー(50年代までは,多くは三角関係を主題とした風俗喜劇)によりロングランを続けていた町中の商業劇場を,〈ブールバール劇〉として否定する視座を普及させることになる。
[〈68年型演劇〉とその後]
 アルトーが30年代に主張した〈残酷演劇〉の徴の下に,ポーランドのJ.グロトフスキとオフ・オフ・ブロードウェーからきたリビング・シアターの刺激によって出現する〈68年型演劇〉は,〈肉体の演劇〉による〈言葉の演劇〉の廃絶をはじめ,ラディカルな〈異議申立て〉であろうとした。…

※「ウエルメードプレー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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