日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウュルツ」の意味・わかりやすい解説
ウュルツ
うゅるつ
Charles Adolphe Wurtz
(1817―1884)
フランスの化学者。ストラスブール大学で医学を修めたのち、ドイツのリービヒの下で化学研究を行う。パリ大学教授(1853)、同学部長ののちソルボンヌに移る。科学アカデミー会長(1881)、上院議員も務め、ファント・ホッフらの後進を育てた。ハロゲン化アルキルと金属ナトリウムから炭化水素が生成するウュルツ(ウルツ)反応を発見。エチレングリコールなど多価アルコールやエチレンオキシドを合成し、これらに基づく無機と有機化学の統一を提唱するなど、勃興(ぼっこう)期の有機化学の発展に貢献した。とりわけ、尿素誘導体からのアルキルアミンの合成(1849)によりアンモニア水素の置換可能性を示し、ジェラール(ゲルアルト)らの新型の理論構築のきっかけをつくった。
[肱岡義人]