日本大百科全書(ニッポニカ) 「グリコール」の意味・わかりやすい解説
グリコール
ぐりこーる
glycol
1分子中にヒドロキシ基を2個もつアルコールの総称。もっとも簡単な構造のグリコールは、慣用名エチレングリコール(1,2-エタンジオールが正式名)である。これは、エチレンCH2=CH2を酸素と反応させてエチレンオキシド(酸化エチレン)とし、これから製造され、単にグリコールと略称されることもある。エチレングリコールは、これと炭素数が等しいがヒドロキシ基が1個しかないエタノール(エチルアルコール)CH3CH2OHに比べて沸点が高く、また粘稠(ねんちゅう)である。エチレングリコールはテレフタル酸と重縮合させてポリエチレングリコールテレフタレートとよばれるポリエステルを製造するのに用いられる。このポリエステルは合成繊維としても多く使用されるだけでなく、アルキド樹脂の製造など各種の目的に利用される。さらにエチレングリコールは融点が-12.6℃であるうえ、沸点が197.6℃と高く、しかも水とよく混合するので、自動車のエンジンの冷却用の不凍液としても用いられる。このような種々の用途のために、日本では年間約90万トンのエチレングリコールが生産されている。
1分子の中に2個のヒドロキシ基があることは、2個のヒドロキシ基の反応性が高いため、分子の一つの箇所でなく二つの方向に向かって反応して、大きい分子をつくることができる意義がある。
[徳丸克己]