改訂新版 世界大百科事典 「エレファンタ」の意味・わかりやすい解説
エレファンタ
Elephanta
西インド,ムンバイー(ボンベイ)湾内に浮かぶ小島。島内には五つのヒンドゥー教石窟があり,第1窟がとくに重要である。開掘年代は,6世紀にさかのぼらせる説もあるが,8世紀とするのが穏当であろう。東北西の3方に入口,南(奥壁)に主神をまつる十字形プランで,北入口から奥壁までと東西両入口の距離は等しく約40mあり,広間西寄りにリンガ(シバ神の象徴としての男根)をまつる方形祠堂を掘り出している。主神の三面シバ胸像は544cmもの巨大な高浮彫で,圧倒的な迫力をそなえたヒンドゥー教彫刻の最高傑作の一つである。そのほか〈舞踏王(ナタラージャ)〉〈両性具有の主宰者〉〈ガンガー(ガンジス)川の保持者〉〈パールバティーとの結婚〉などのシバの諸相を表す大画面の浮彫が8面あり,方形祠堂の四つの入口には1対ずつの巨大な守門神(ドバーラ・パーラ)が彫られている。いずれも威厳に満ち,静寂の気が漂っている。窟内に林立する柱も太く重厚である。
執筆者:肥塚 隆
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報