国際連合の正式加盟国ではないが、国連総会や各種会合に出席して発言することを認められた「国連オブザーバーUnited Nations General Assembly observers」のうち、「国家」としてその地位を認められたもの。原則、国連での議決権(投票権)はないが、例外として、国際法廷の判事選出では投票を認められているほか、議決案の作成に関与することも認められている。つまり国際法上の国家ではないものの、国際社会から国家として認められたという政治的、象徴的な意味合いをもつ。オブザーバー国家は、2015年末時点でローマ教皇庁(バチカン市国)とパレスチナの二つである。過去には1956年(昭和31)に国連に加盟する前の日本のほか、韓国(1991年加盟)、北朝鮮(1991年加盟)、スイス(2002年加盟)などが国連加盟前の一時期、オブザーバー国家であった。
国連総会は2012年11月、国連におけるパレスチナの地位を、オブザーバー機構からオブザーバー国家に格上げする決議案を賛成138、反対9、棄権41の賛成多数で議決した。反対したのはパレスチナと紛争を続けるイスラエル、ユダヤ系市民の影響力が強いアメリカ、カナダなどである。パレスチナ地区を1947年まで委任統治していたイギリスや、ナチス迫害の歴史的経緯からイスラエル寄りの姿勢をとるドイツなどは棄権に回った。外交でアメリカと一線を画すフランス、ロシア、中国、インドは賛成した。日本は国連の主要決議でアメリカと行動をともにすることが多いが、産油国の多いアラブ諸国との関係を重視し、オブザーバー国家格上げに賛成票を投じた。パレスチナはオブザーバー国家格上げを独立国家樹立への弾みとする考えで、2015年には国際刑事裁判所(ICC)へ加盟し、イスラエルの軍事行動や入植活動をICCに提訴する道が開かれた。
なお国連オブザーバーには、オブザーバー国家のほかに、ヨーロッパ連合(EU)や経済協力開発機構(OECD)など「機構(組織)」としてその地位を認められた「オブザーバー機構」がある。
[編集部 2016年1月19日]
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