必要なときに必要な部数(とくに少部数)の印刷を行う仕組みや取組みの概念。通常、電子写真方式やインクジェット方式を利用した高速デジタル印刷機による印刷やその工程をさす。PODともよばれる。また、この仕組みを利用して少部数の書籍や雑誌を印刷・作製することをオンデマンド出版という。
従来のインキを紙に転写する印刷は、文字や写真の材料を組み合わせて版をつくり、その版を印刷機に取り付け印刷し、その後インキを乾燥させるという工程を経る。そのため、印刷するデータができたときから印刷物になるまでに、最短でも1日は必要である。そして、版の作成には相応の費用がかかることから、印刷部数が多ければ多いほど1枚当りの単価が安価になり、総費用抑制のため必要以上に印刷することも少なくない。オンデマンド印刷はデータ完成から印刷物ができるまでが即時的で、単価は部数によらず一定である(ただし版作成による通常印刷よりも、単価はコスト高になることが多い)。この点からみれば、オフィスや家庭にあるプリンターでの出力も広義ではオンデマンド印刷(機)といえる。
また、乾燥時間が短いため印刷物の完成時間が早くなる特性をもつ、UV(紫外線)露光装置と専用インキを使ったオフセット印刷(UV印刷)を、オンデマンド的に利用する取組みも少しずつ増えている。ただし、この場合は版は作成する必要があり、100枚以下のような少部数印刷には不向きである。
印刷物の大きさでは、オフセット印刷機はA1判以上のサイズに対応しているのが一般的であるのに対し、オンデマンド印刷機は最大でA3判ワイドまでの物が多いという制約もある。
[中村 幹]
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