改訂新版 世界大百科事典 「オートバイ競走」の意味・わかりやすい解説
オートバイ競走 (オートバイきょうそう)
オートバイでスピードと操縦技術を競うスポーツ。英語ではモーターサイクルレースmotorcycle raceという。競走に使用される車種は,日本で原動機付自転車と呼ばれる50㏄のミニバイクから750cc(1000㏄のものもある)のモンスターバイクまで種々雑多である。
歴史
オートバイ発明の草創期である19世紀末,すでに宣伝の意味を兼ねてフランスなどでロードレース,トラックレースが始められた。しかし,本格的なレースは1904-06年に行われた国際オートバイ・カップ・レースが最初といわれている。このレースが,現在世界各地で行われているロードレースの〈グランプリ(GP)レース〉の原形である。その組織としては04年に国際モーターサイクリスト・クラブが誕生,49年に国際モーターサイクリスト連盟Fédération Internationale Motorcycliste(略称FIM。本部ジュネーブ)に改組されて現在に至っている。
日本では1915年に目黒競馬場で行われたレースが最初。50年から賭の対象としてのオートレースが始まった。スポーツとしての本格的なレースの始まりは,55年の浅間高原ロードレースで,欧米に比べて歴史は新しい。63年に統轄団体として日本モーターサイクル協会(略称MFJ)が誕生,以後,63年から67年にかけて鈴鹿サーキット,富士スピードウェイでも世界GPのシリーズ戦が行われた。その後,しばらくの間〈世界〉のタイトルを冠したレースは中断されていたが,87年から世界ロードレース選手権シリーズ〈日本GP〉が復活,以後毎年,鈴鹿サーキットで開かれている。また,同じく鈴鹿サーキットでは,1978年から750㏄をベースとした大排気量車による世界耐久レース選手権シリーズ〈鈴鹿8時間耐久レース〉が,“真夏の祭典”として大勢のファンを魅了している。
種類
おもなレースには次のようなものがある。(1)ロードレース 一般の舗装道路をコースとし,他の交通を一時ストップして行われる。日本ではレースのために公道を使用させないので,常設コースで行う。華やかで一般によく知られている。世界選手権では,エンジン排気量により50㏄,125㏄,250㏄,350㏄,500㏄,サイドカーの6種目がある。1907年に始まったイギリスのマン島のTT(Tourist Trophy)レースがもっとも有名。しかし,1周60.7km,高低差410m,カーブが219ヵ所もあり,世界でもっとも危険で過酷であるため,安全対策上好ましくないとの理由で,現在世界GPレースの日程からはずされ,独自に行われている。87年から世界選手権シリーズのエンジン排気量改定で,現在のGPレースは125㏄(GP125),250㏄(GP250),500㏄(2002年からMoto GPとなる)となっている。(2)トラックレース ふつうは楕円形舗装トラックを周回するが,トラックが草,砂,氷のレースもある。1909年からアメリカで組織的に始められて普及。(3)モトクロス motocrossはモーターサイクルによるクロスカントリー・レースの意で,野や山,急坂,ぬかるみなど荒地のコースを周回して所要時間で勝負を競う。19年にイギリスで始められた。(4)トライアル スピードを争うのではなく操縦技術を競う。変化に富んだ地形のコースで,操縦技術をポイント採点する。イギリスで始められた。現在,国際レースはすべてFIM主催,公認のもとで行われ,ロードレース,モトクロス,トライアル,耐久レースの各競技にすべて世界選手権のタイトルがかけられている。このうちロードレースとモトクロスは排気量別にクラス分けされ,レースの成績に応じた点数により年間のチャンピオンが決められる。また,メーカーに対するタイトルもある。
執筆者:石田 寿喜
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報