カブリダニ

改訂新版 世界大百科事典 「カブリダニ」の意味・わかりやすい解説

カブリダニ

カブリダニ科Phytoseiidaeに属するダニの総称乳白色ないし淡褐色で,胴長は雌がふつう0.3~0.5mm,雄がふつう0.2~0.35mm。背板毛は近縁の科よりも少なく,20対になることはない。胴背毛の長さがほぼ一様なものから,一部の胴背毛が著しく長いものまでいろいろである。植物にすむものが多く,ハダニフシダニ,小型昆虫類,花粉などを食べるが,主としてハダニを捕食するところから,農作物に有害なハダニの天敵として著名。獲物にかぶりつくのが名の由来。日本からは60種以上が知られ,日本全土にいるケナガカブリダニAmblyseius longispinosus,西日本に多いニセラーゴカブリダニA.eharaiは代表的。地中海沿岸,チリ原産チリカブリダニPhytoseiulus persimilisは,ハダニを常食とし,捕食力,繁殖力が大きいので世界的に注目され,日本でも施設園芸におけるハダニの生物的防除に用いる試みがなされつつある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カブリダニ」の意味・わかりやすい解説

カブリダニ
Phytoseiidae; phytoseiid mite

クモ綱ダニ目カブリダニ科に属する種類の総称。体は一般に乳白色ないし淡褐色で,雌は 0.3~0.6mm,雄はそれより小型。背毛が 15~18対あり,20対以上あるマヨイダニ科 Ascidaeと区別される。多くの植物上に見出され,常に捕食性のもの,ときに植物質の餌をとるもの,花粉を常食とするものなどがある。捕食性の種はハダニなどの植物寄生性ダニ類の天敵となるので,生物農薬として用いようとする試みがなされている。日本産は 50種以上が知られており,ケナガカブリダニ Amblyseius longispinosus,ニセラーゴカブリダニ A. deleoni,フツウカブリダニ Typhlodromus vulgarisなどがごく普通にみられる。 (→ダニ類 )

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カブリダニ」の意味・わかりやすい解説

カブリダニ
かぶりだに / 咬蜱
被蜱

節足動物門クモ形綱ダニ目カブリダニ科Phytoseiidaeのダニ。乳白色ないし淡褐色の種類が多いが、チリカブリダニはオレンジ色を呈す。体長は雌0.3~0.6ミリメートル。全世界から800種以上、日本には50種以上が知られている。植物にすむものが多く、ハダニ類に比べて行動が活発。ハダニ類を捕食する種類を含み、ハダニの天敵として有力視される。とくに地中海沿岸およびチリ原産のチリカブリダニは著名な天敵である。ケナガカブリダニAmblyseius longispinosusは日本全土に分布し、ニセラーゴカブリダニAmblyseius eharaiは西日本に多く、農作物や果樹につくハダニ類の自然防除に役だっている。近年、茶園より、農薬に抵抗性をもつケナガカブリダニが確認され、薬剤を散布する農作物において、天敵を利用する研究が進められている。

[森 樊須]

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世界大百科事典(旧版)内のカブリダニの言及

【ダニ(蜱∥蟎∥壁蝨)】より

…赤道直下の熱帯から,標高3000m以上の高山や南極にも生息し,森林,草原,湿原,海浜,湖沼,河川,洞穴,温泉,さらに人為的な影響下にある果樹園,畑,牧場,ゴルフ場,庭園,道路の植込みに至るまで,あらゆる場所に無害なダニが見られる。そのうち,ササラダニは土壌中に生活して落葉などの植物遺体の分解に関与して,豊かな土づくりに貢献しているし,樹木の上をパトロールするカブリダニ,ナガヒシダニ,テングダニなどは農林害虫となるハダニを捕食してくれる。セミ,バッタ,トンボ,カメムシ,ガなどに寄生するダニも種類が多い。…

※「カブリダニ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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