カルケドン信条(読み)カルケドンしんじょう

改訂新版 世界大百科事典 「カルケドン信条」の意味・わかりやすい解説

カルケドン信条 (カルケドンしんじょう)

451年のカルケドン公会議で定められた信条。いわゆるカルケドン派教会(のちのカトリック教会と東方正教会)の教義根幹をなす。キリストにおける神性と,人性の関係といった微妙な問題をめぐって生じた教義論争に決着をつけるために,キリストは完全な神性と完全な人性を備えるとしたうえで,その両者の関係を〈混ざらず,変わらず,分かれず,離れない〉という否定の表現によって規定した。このうち前半は神性の優位を主張した単性論を否定したもの,後半は人性と神性の明確な区分を主張したネストリウスを批判したものである。しかしネストリウスの説を正面から否定していないので,のち単性論派からネストリウス的異端として弾劾されることになった。この信条の作成にはローマ主教レオ1世書簡レオ教書》(449)が指針となった。なお7世紀以降の教会では,キリスト論を〈カルケドン信条〉の規定以上に進めないことにしている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のカルケドン信条の言及

【キリスト教】より

…続いて,キリストが完全なる神であると同時に完全なる人間であるとのキリスト論に対する疑念が現れ,ネストリウス派と単性論派という対照的な異端を生んだ。この問題はカルケドン公会議(451)で決着がつき,〈カルケドン信条〉がキリストの完全な両性を規定した。しかし単性論派問題は尾を引き,エジプトとシリアの教会がしだいに離反した。…

【キリスト論】より

…このとき,キリストの人性の完全性を否定するアポリナリウスも退けられたが,続いてネストリウスは逆に人性を第一として神性を弱め,あるいはエウテュケスは人性を神性の中に吸収するなど,神性・人性の区別を明らかにしない〈単性論〉が行われた。これを排したのはカルケドン信条(451)の〈両性論dyophysitism〉であって,〈両性は混合せず分離せず〉というのがその表現である。(3)古代教会の信条は本質や本性といった抽象的概念を用いての形式的規定にとどまっていたが,中世のカトリック教会は西方教会の赦罪論を受けて,キリストの位格のみならず,その業(わざ)についての考察を進めた。…

【信条】より

…エフェソス公会議(431)は新たな信条の作成と修正を禁じた。したがってキリストの両性を定めた〈カルケドン信条〉(451)は,厳密には信条ではなく,〈決定〉である。 信条が単なる洗礼用の便宜的な定式から教義の根幹を規定する権威ある定式となると,それは典礼のなかに取り入れられた。…

【単性論】より

…エウテュケスが異端とされると,アレクサンドリア主教ディオスコロスが巻返しをはかり,エフェソスのいわゆる〈盗賊教会会議〉(449)で単性論の勝利を宣言した。これに対し,ローマ司教レオ1世はコンスタンティノープル教会と結んでカルケドン公会議(451)を開き,エフェソス会議の決議を取り消し,キリストの両性の完全な結合を定め(〈カルケドン信条〉),単性論を異端とした。ディオスコロスは追放されたが,エジプトの教会は〈カルケドン信条〉をネストリウス的偏向と解釈し,少しずつ分離を始めた。…

※「カルケドン信条」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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