改訂新版 世界大百科事典 「キュー植物園」の意味・わかりやすい解説
キュー植物園 (キューしょくぶつえん)
Royal Botanic Gardens, Kew
イギリスのロンドン西郊外にある植物園で,大英帝国が隆盛を極めていたころには,エジンバラ,ダブリンをはじめ,アジアでもカルカッタ,シンガポールなどにあった大英帝国傘下の植物園群の中枢となっていた。現在も,世界最大のハーバリウム(植物資料標本館)をもっており,植物分類学研究のセンターの一つである。1759年に王立植物園になったときには8万1000m2の規模であったが,18世紀末にバンクスJ.Banksが園長をしていた間に約10倍に拡張し,現在では120万m2を上回る広さを占めている。世界各地の植物を集め,大温室には熱帯植物も豊富に栽培されていて,収容されている植物は2万5000種,標本は700万枚を数える。形式上は農林水産省の所属であるが,組織としての独立性が強い。
ハーバリウムと図書館,有用植物博物館,ジョドレル研究所,植物園の4部門で構成されている。19世紀後半にフッカー父子W.J.& J.D.Hookerが引き続いて園長をしていた間に,《植物の属》《キュー植物目録》などの刊行が始まり,世界の各地から集められた生材料(植物園)と資料標本(ハーバリウム)に基づく植物学の研究機関として発展した。同時に,市民のための社会教育や憩いの場としても活用されている。
執筆者:岩槻 邦男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報