農林水産業の健全な発達,農林水産業従事者の福祉の向上と食糧の安定的な供給などのため,農政,林政,水産行政を一体的に担当する行政機関。略称,農水省。1881年の農商務省の設置以来の歴史をもち,1925年農林省,商工省に分離され,43年に再統合されて農商省となったが,45年再分離されて農林省となり,78年,200カイリ時代の到来に対応して農林水産省と名称を改めて現在に至っている。
その内部組織も,歴史的には一般農政,林野,水産,畜産,蚕糸,農地,食糧などに分かれ,種々の変遷を経てきているが,とくに第2次世界大戦後の経過では,1948年に水産庁,49年に食糧庁(2003年廃止),林野庁と,まとまりのある三つの行政分野において外局制度がとられるに至り,また,1972年に本省内部部局の改革が行われ,従来の農地局,農政局,蚕糸園芸局が再編成され,構造政策,生産政策,流通政策の三本柱に対応して構造改善局,農蚕園芸局,食品流通局が設けられた。本省内部部局としては,大臣官房および経済,構造改善,農産園芸,畜産,食品流通の5局(2008年現在,総合食料,消費・安全,生産,経営,農村振興の5局),外局としては,食糧,林野,水産の3庁から編成されている。経済局は農林漁業者に対する金融,共済,保険,農協その他の団体に関する行政,農林水産物に関する貿易,関税,国際協力等の国際関係事務,農林水産関係の統計事務等を担当する。構造改善局は農業経営の改善,農地制度,構造改善事業および土地改良事業,土地および水等の農業上の利用計画等を担当する。農産園芸局は,農産物一般(ただし野菜を除く)の生産対策を中心として,肥料,農機具,農薬,種苗,植物防疫その他を担当する。畜産局は畜産分野について生産,流通,消費の全般に関する行政を担当し,食品流通局は野菜,飲食料品,油脂に関する行政のほか,農産物の物価対策,卸売,商品取引,品質規格,消費者保護等流通および消費に関する行政を担当する。食糧庁は主として食糧管理特別会計等により米,麦等主要食糧について,その買入れ,売渡し,生産,流通,消費その他需給の調整,輸出入の調整等を行う。林野庁は,四現業の一つとして国有林野事業を経営するほか治山行政,民有林行政等林政一般を担当する。水産庁は沿岸漁業,沖合漁業,遠洋漁業,内水面漁業その他水産業の振興,水産資源の保護培養,水産物の生産,流通,消費等水産行政全般を担当する。本省の地方出先機関としては地方農政局(7)等,食糧庁の地方出先機関としては食糧事務所(47。2003年北海道農政事務所と地方農政事務所に改編)等,林野庁の地方出先機関としては営林局(9),営林支局(5),営林署(264)等がそれぞれ設置されている。なお1999年営林局を森林管理局(7),2営林局と5営林支局を森林管理局分局(7。2004年廃止),営林署を森林管理署とする。また,農林水産省の付属機関としては,農林水産技術会議の傘下の試験研究機関をはじめとして検査機関,農場,研修機関等があり,さらに,22に上る審議会が置かれている。農林水産省全体の定員は1997年度末4万5499人,うち外局関係は食糧庁1万0647人,林野庁1万0428人,水産庁2117人となっている。
執筆者:八木 俊道
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
国家行政組織法第3条2項に基づき、農林水産省設置法によって設置された国の行政機関。1925年(大正14)農商務省が農林省と通商産業省の前身たる商工省に分割され、以後、農商省を経て、戦後の1945年(昭和20)農林省として独立し、1978年に農林水産省となる。2001年(平成13)1月の中央省庁再編では他省庁との統合や名称変更はなかった。
同省は、農林畜水産業に不可欠な自然環境をはじめ、これらの業を営む者が安心して生産にいそしめる諸条件を保全整備することによって、日本の農林畜水産業の振興を図り、国民に対し食料の安定的な供給を確保することを任務とする。これを果たすために取り扱う事務のおもなものは以下のようなものである。(1)食料の安定供給の確保に関する政策(食品衛生に係るものを除く)、(2)農林水産業に係る国土の総合開発および国土調査、(3)農業協同組合、森林組合、漁業協同組合その他の農林水産業者の協同組織の発達、(4)同省が扱う事務と関係する一般消費者の利益の保護、(5)農林水産物の食品としての安全性の確保に関する事務のうち生産過程に係るもの(食品衛生に関することや環境省の所掌に係る農薬の安全性の確保に関することを除く)、(6)農地の土壌の改良や汚染の防止・除去、(7)農業機械化の促進、(8)中央競馬および地方競馬の監督・助成、(9)農業経営の改善・安定、(10)農業を担うべき者の確保、(11)農業者年金に関すること、(12)農林中央金庫等の業務の監督、(13)農山漁村に滞在しつつ行う農林漁業の体験などの農山漁村と都市との地域間交流、(14)森林資源の確保や総合的な利用、(15)森林の経営の監督・助成、(16)保安林や水産資源の保存・管理、(17)漁業の指導・監督、(18)水産業経営の改善・安定、(19)漁港の修築・維持管理および災害復旧、(20)農林水産技術についての試験や研究に関する事務、など。
長は農林水産大臣。内部部局として、大臣官房のほか、消費・安全局、食料産業局、生産局、経営局、農村振興局が、審議会等として、農業資材審議会、食料・農業・農村政策審議会、獣医事審議会、農林漁業保険審査会、独立行政法人評価委員会が置かれている。施設等機関として、植物防疫所、動物検疫所、那覇植物防疫事務所が、特別の機関として、農林水産技術会議が、地方支分部局として、地方農政局(全国7か所。沖縄は内閣府沖縄総合事務局の管轄)と北海道農政事務所がある。さらに外局として、林野庁と水産庁が置かれている(食糧庁は、2003年に廃止)。
[平田和一]
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1978年(昭和53)経済水域200カイリ問題を背景に,水産行政重視の立場から農林省を改称してできた官庁。食糧庁・水産庁・林野庁を外局とする。農林経済局が経済局と名称変更した以外は,農林省の組織をひきついでいる。2001年(平成13)の中央省庁改編で官房・4内局・3外局となる。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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