日本大百科全書(ニッポニカ) 「ギエンヌ」の意味・わかりやすい解説
ギエンヌ
ぎえんぬ
Guyenne
フランス南西部の歴史的地域名、旧州名。古くはGuienneとつづった。ギュイエンヌともいう。アキテーヌ盆地の中心部からマッシフ・サントラル(中央群山)の西側にかけて広がり、ガロンヌ川とドルドーニュ川が流れる。ローマの属州アクィタニア(フランス語名アキテーヌ)の中心部を継承する地域で、州名としてはフランス革命の前まで用いられた。革命後は、現在のアベイロン県、ドルドーニュ県、ジロンド県、ロート県と、タルン・エ・ガロンヌ、ロート・エ・ガロンヌ両県の一部に分けられた。ぶどう酒と穀物の産地として知られる。またローマ時代からの多くの遺跡が各地に点在する。中心都市のボルドーでは、ぶどう酒生産をはじめ、鉄鋼、造船、化学、食品などの工業が盛ん。
[青木伸好]
歴史
フランス王ルイ7世と離婚したアリエノール(アキテーヌ公ギヨーム9世の継承人)がプランタジネット家のヘンリー(後のイギリス王ヘンリー2世)と再婚したことにより、ギエンヌ地方はイギリスの支配下に置かれることになり(1154)、英仏間の長期にわたる係争地となった。ルイ9世の時代フランスに返されたがすぐイギリスの支配に移行し、1294年フィリップ4世が没収したが1303年にはイギリスに返還されるという推移のなか、ギエンヌが最終的にフランスによって再征服されたのは1453年カスティヨンの戦闘ののちであって、王領地に編入されたのは1472年である。フランス革命が起こるまでギエンヌは、南に接するガスコーニュとともにボルドーを首都とした地方の政治、経済、文化の発展に寄与した。ちなみにボルドーに高等法院が開設されたのは1462年である。
[志垣嘉夫]