日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガスコーニュ」の意味・わかりやすい解説
ガスコーニュ
がすこーにゅ
Gascogne
フランス南西部の歴史的地域名、旧州名。英語名ガスコニーGascony。ガロンヌとピレネー地方の間にあり、ジェール、ランド、オート・ピレネーの諸県と、アリエージュ、オート・ガロンヌ、ジロンド、ロート・エ・ガロンヌ、タルン・エ・ガロンヌの諸県の一部が含まれる。経済的には、漁業、牧畜、ワイン製造、ブランデー製造などが中心をなし、観光産業も発達している。独特な方言による文学が行われる。
[青木伸好]
歴史
紀元前56年ローマ軍により征服されてアクィタニア州の一部に編入され、紀元後3世紀にはノベンポプラニー地方Novempopulanieとよばれた。5世紀以来、西ゴート人、さらにフランク人の支配下に入った。6世紀に、西ゴート人の支配に反抗したナバル地方のイベリア系バスコン人Vascons(現バスク人の祖先)が移住した。地名は、このバスコン人の地バスコニアVasconiaに由来する。9世紀にボルドーを首都とするガスコーニュ公領に統合されたが、11世紀には諸侯領に細分された。1036年ポアチエ・アキテーヌ公領に吸収され、さらに、アリエノール・ダキテーヌのアンリ・プランタジュネとの再婚(1152)によってイギリス王の支配下に入り、1259年のパリ協約でフランス王の封土としてのイギリス王領とされた。百年戦争の戦場となったが、同戦争後イギリス勢力は一掃され、ギエンヌ州の一部となった。
[千葉治男]