改訂新版 世界大百科事典 「ケンチャヤシ」の意味・わかりやすい解説
ケンチャヤシ
curly palm
Howea belmoreana Becc.
ヤシ科。オーストラリアのシドニーの北東方にあるロードハウ島に自生するケンチャヤシ属Howeaの1種で,ほかにヒロハケンチャヤシH.forsteriana Becc.がある。両者とも高さ8~10mになり,羽状複葉は長さ2~3mになる。小葉は長披針形で,約40片が葉軸に対生する。ケンチャヤシの小葉は葉軸に対しV字形につくが,ヒロハケンチャヤシの小葉は葉軸に対しほぼ水平につくので区別できる。葉柄は長く,斜上し,葉はゆるやかに弓状に曲がる。葉数が少ないので小鉢物には向かない。普通,少し幹が立ち始めたときに,草丈2m以上の大鉢物として利用する。ホテルや宴会場など広い場所の装飾に適し,欧米でも人気の高い種類である。明治末年には導入されていた。ケンチャの名は旧属名Kentiaによる。寒さには強く2~3℃で越冬し,実生で繁殖する。かつてロードハウ島では,これらのヤシの種子採取が島の主産業になるほどの需要があった。
執筆者:高林 成年
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報