コクシジオイデス症

内科学 第10版 「コクシジオイデス症」の解説

コクシジオイデス症(真菌症)

(1)コクシジオイデス症(coccidioidomycosis)
 二形性真菌であるCoccidioides immitisによる.真菌としては最も感染力が強く危険であり,健常者に容易に感染する.米国南西部(カリフォルニアアリゾナなど)が中心であるが,中南米各地にも症例がみられる.真菌症のなかで唯一,感染症法(四類)で指定されている.
 感染はC. immitisの胞子(分節型分生子)の吸入による.胞子は肺で球状体へと成長し,大量の内生胞子を放出して広がっていく.潜伏期は1~4週間である.病型には,急性肺コクシジオイデス症,慢性肺コクシジオイデス症,播種性髄膜,骨,皮膚など)などがある.危険因子としては,細胞性免疫障害(AIDS,ステロイド投与臓器移植など),糖尿病,妊娠,慢性閉塞性肺疾患などがある.
 症状は病型,病態により多彩であるが,感冒様症状(発熱,咳,痰,胸痛など),結節性紅斑,血痰,体重減少などがみられる.検査所見では,一般的な炎症反応に加え,ときに好酸球増加がみられる.血清(あるいは髄液)の特異抗体は,感度,特異度とも高く有用である.近年,抗原検出法も開発された.胸部X線写真では,結節,空洞,浸潤影,胸水,びまん性粒状影などがみられる.確定診断には培養あるいは病理検査による菌の確認が必要であるが,培養には危険が伴うので安易に行うべきではない.治療は,病型,重症度に応じて,抗真菌薬(アゾール薬,アムホテリシンBなど)の投与,あるいは病変部の切除を行う.播種性で中枢神経系などの重要臓器に感染が拡大した場合は,特に予後不良である.[亀井克彦]

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改訂新版 世界大百科事典 「コクシジオイデス症」の意味・わかりやすい解説

コクシジオイデス症 (コクシジオイデスしょう)
coccidioidomycosis

コクシジオイデス・イミティスCoccidioides immitisによって起こる感染症。北米や中南米に地方病的にみられ,とくに南西部アメリカのカリフォルニアのサン・ウォーキン川流域およびメキシコ北部の砂漠あるいは半砂漠地帯が流行地である。菌は,土壌および野生の齧歯(げつし)類から分離され,生体内と培地上では異なる形態を示す二相性菌で,感染は胞子の吸入により主として肺に生じるが,初感染の60%は無症状で,残り40%が不定の呼吸器症状から肺炎を起こす。慢性の肺コクシジオイデス腫は,肺の繊維性肉芽腫性浸潤を示し,予後はよい。播種性コクシジオイデス症は,皮膚,骨に好発し,とくに顔面,頭部にこぶ状病変を生じる。髄膜炎症状を呈する病型もみられ,いずれも予後は悪い。皮内反応はほとんど100%陽性で,感染の有無を知るのに役立つが,播種性となると反応が出にくい場合がある。沈降反応,補体結合反応も予後の判定に役立つ。喀痰培養で本菌を検出することができる。治療にはアムホテリシンBを用いる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コクシジオイデス症」の意味・わかりやすい解説

コクシジオイデス症
コクシジオイデスしょう

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