可溶性の抗原と,それに対する抗体が特異的に結合して,沈殿物を生じる反応.沈降反応は混合する抗原と抗体との比率によって影響を受け,一定の抗原抗体比でもっともすみやかに起こり,抗原が多すぎても少なすぎても反応は弱い.沈降反応出現は,
(1)抗原の特異性決定群および抗体結合部位の数,
(2)抗原と抗体の結合の強さ,
(3)抗体の親水性および荷電状態,
などにより影響を受ける.沈降反応は,沈殿物を定量することなどにより血清中の抗体を正確に定量しうる方法として重要であるとともに,ゲル内拡散法,免疫電気泳動法など応用例も多く,免疫化学の基本的実験手段となっている.[別用語参照]凝集反応
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…タンパク質,ウイルス,細菌その他,天然の抗原には一般に抗原決定基が複数存在し,抗体分子にも結合部位が2個(IgM抗体は10個)あるので,抗原・抗体複合体はふつう,抗原と抗体の多分子集合体である。そのため,可溶性の抗原でも抗体と複合体をつくることによって沈殿し(沈降反応という),あるいは細菌,赤血球などの浮遊物が凝集する現象(凝集反応)がみられる。抗原・抗体複合体中では,数多くの抗体分子が抗原との結合によって集合しており,このような複合体が細胞を刺激するのは,標的となる細胞の細胞膜表面にFcレセプターとよばれる受容体が多数存在し,複合体中の複数の抗体分子のFc部分が複数の受容体と多点結合をして受容体を架橋するためである。…
…
[新しい概念の確立]
こうして,免疫の重要な二つの側面,抗体による体液性免疫と細胞が直接働く細胞性免疫についての研究が進展し,それぞれについて重要な発見が相次いだ。抗体については,それが抗原と特異的に反応できるタンパク質で,しばしば血清中の他の一連の酵素系(補体)を活性化して,さまざまな生体内反応を起こすこと,試験管内では抗原と結合して沈殿を起こしたり(沈降反応),もし抗原が粒子状抗原であればそれの凝集を起こしたりする(凝集反応),いわゆる〈抗原抗体反応〉を起こすことがわかった。補体を活性化すれば,抗原の溶解や破壊,白血球による貪食を誘導する。…
※「沈降反応」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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