日本大百科全書(ニッポニカ) 「コペルニクス体系」の意味・わかりやすい解説
コペルニクス体系
こぺるにくすたいけい
16世紀にコペルニクスが想定した太陽系の構造組織。太陽を中心としてその周囲を内側から数えて、水星、金星、地球、火星、木星、土星の順で同心円を描きながら公転しているという構図。公転の方向は北側から見て一斉に反時計回り(順行)で、公転速度は内側ほど速く、したがって公転周期は外側ほど長い。なお月のみは地球を中心とする小半径の副円(周転円)上を公転する。この体系によれば、従来公認されてきたプトレマイオス体系(周転円説)よりも、はるかに単純でしかも合理的に惑星の視運動を説明できる。たとえば、火星の衝―地球接近―逆行の三つぞろい現象も、ごく当然の関係として理解される。また水星や金星の最大離角を測定することによって、それらの軌道半径を幾何学的に決定しうる。また、当時社会的に問題であった天体位置予報(航海暦)の正確性も、プトレマイオス体系によるよりも精度を増すことが実証された。この体系説は、コペルニクスの主著『天球の回転について』(1543)の趣旨であって、コペルニクスはイタリア留学中に古代ギリシアのアリスタルコスの手記(前3世紀)を発見して、観測で実証し、公刊した。しかし天体位置推算の正確度はまだ完全ではなかった。それは惑星の軌道の形にギリシア以来の円形を保守したことに原因する。この点はのちにケプラーの第一法則(1609)によって是正された。
[島村福太郎]