アリスタルコス(読み)ありすたるこす(英語表記)Aristarchos

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アリスタルコス」の意味・わかりやすい解説

アリスタルコス(数学者、天文学者)
ありすたるこす
Aristarchos
(前310―前230)

古代ギリシアの数学者天文学者太陽中心説を初めて唱えた。サモス島に生まれ、アリストテレスが創設した学園リケイオンの3代目学長ストラトンStratōnの弟子となった。残されている唯一著書『太陽および月の大きさと距離について』で、彼は三角法を用いて、地球と月、地球と太陽の距離の比を求め、地球と太陽の距離は、地球と月の距離の18倍から20倍の間とした(実際は約400倍)。また、月と太陽のそれぞれの視直径を求め、それぞれの体積比も算出した。太陽の大きさは実際より、はるかに小さくなっているが、それでも地球の300倍とされ、太陽中心説の根拠となった。アルキメデスはその著『砂粒を数えるもの』でアリスタルコスを詳細に検討しており、地球が太陽の周りを回っているにもかかわらず、年周視差が発見されないことから、アリスタルコスは恒星球の大きさをそれまでよりずっと大きく見積もったとしている。なお、コペルニクスは古代の太陽中心説を検討したにもかかわらず、アリスタルコスには触れなかった。

高山 進]


アリスタルコス(文献学者)
ありすたるこす
Aristarchos
(前217ころ―前145)

古代ギリシアの文献学者。サモトラキに生まれる。アレクサンドリア図書館長を務めたほか、プトレマイオス7世に教え、大ぜいの優れた弟子を養成した。文法措辞(そじ)、正書法、語源学など多方面にわたる研究をし、厳密な原典批判の方法を確立させたことで知られる。多くのギリシア古典詩人について校訂本や注釈書を刊行し、とくにホメロスの詩の校訂注解は後代の文献学の発展に重要な役割を果たした。

[岡 道男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アリスタルコス」の意味・わかりやすい解説

アリスタルコス[サモス]
Aristarchus of Samos

[生]前310頃.サモス
[没]前230頃
古代ギリシアの天文学者。ピタゴラス派の説いた地球の回転説を支持し,地球の自転および太陽のまわりの公転を説いたといわれ,そのためにストア派の学者から神の冒涜者と非難された。月食のときに月に映る地球の形から,月の大きさは地球の約3分の1と考え,また半月の際の太陽と月の位置関係から,地球から月および太陽までの距離の比は1:18~20であることを求めた (実際は1:400程度) 。ほかに1年の長さの正確な決定も行なった。彼の地動説は当時ほとんど支持されなかったが,後世 N.コペルニクスによって注目された。

アリスタルコス[サモトラケ]
Aristarchus of Samothrace

[生]前217頃.サモトラケ
[没]前145. キプロス
ギリシアの文献学者。ホメロスその他の詩人・劇作家の作品の編集・注釈に大きな業績を上げた。また,アレクサンドリアの図書館長をつとめ,アレクサンドリア学派の大成者として多くの文献学者を育成したことでも知られる。

アリスタルコス
Aristarchos

聖人。テサロニカの人。パウロの弟子。パウロに従ってローマへ行く。『コロサイ人への手紙』 (4・10) および『使徒行伝』 (19・29,20・4,27・2) に言及されている。

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