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サイード Said, Edward

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

サイード
Said, Edward

[生]1935.11.1. イギリス信託統治領エルサレム
[没]2003.9.25. アメリカ合衆国,ニューヨーク,ニューヨーク
アメリカ合衆国の文学研究者,政治活動家,批評家。フルネーム Edward Wadie Said。裕福なプロテスタントの家系に生まれたアラブ系パレスチナ人。カイロのビクトリア・カレッジに学んだあとアメリカに渡る。1957年プリンストン大学を卒業,ハーバード大学で 1960年修士号,1964年博士号を取得。1969年コロンビア大学教授に就任し,終生同大学の比較文学・英文学の教授の職にあった。『始まりの現象――意図と方法』Beginnings(1975)などの著書でフランス現代思想の批判的紹介者として高く評価された。『オリエンタリズム』Orientalism(1978)では西洋による東洋(アラブ世界)の表象を歴史的に検討し,そこに東洋を異物化し西洋との間に壁を設ける政治的文化操作があると指摘,一躍世界的に注目された。一方,パレスチナ解放運動にかかわり,パレスチナ評議会メンバーとしても活躍した(→パレスチナ分割)。湾岸戦争以後は,アメリカの外交政策を批判するなど精力的な言論活動を展開した。西洋の否定ではなく,西洋と東洋との共存の実現を終始一貫主張し,民族主義的志向を批判した。クラシック音楽の愛好家でもあった。著書に,『パレスチナ問題』The Question of Palestine(1979),『文化と帝国主義』Culture and Imperialism(1993),『知識人とは何か』Representations of the Intellectual(1994),自伝『遠い場所の記憶』Out of Place(1999)など多数。

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デジタル大辞泉の解説

サイード(Edward William Said)

[1935~2003]パレスチナ出身の米国の批評家・文学研究者。コロンビア大教授。1978年発表の著作「オリエンタリズム」では、西欧中心の中東・アジア観を指摘・批判した。他に「世界・テキスト・批評家」「文化と帝国主義」など。

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百科事典マイペディアの解説

サイード

パレスティナ出身の米国の批評家。コロンビア大学比較文学教授。コンラッドの研究者ならびに現代フランスの批評理論の紹介者として出発,《オリエンタリズム》(1978年)でオリエント(アラブ世界)を捏造する言説を歴史的に概観・批判し,現代のポスト・コロニアル批評の震源地となる。
→関連項目オリエンタリズムポストコロニアリズム

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大辞林 第三版の解説

サイード【Edward Said】

1935~2003) エルサレム生まれのアメリカの批評家。著作「オリエンタリズム」により西洋が東洋を見る視線にひそむ偏見をあばき、批判した。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

サイード
さいーど
Edward William Said
(1935―2003)

アメリカの英文学、比較文学者。イギリス委任統治時代のエルサレムに生まれたパレスチナ人で、1948年エジプトのカイロに移り住む。1950年にアメリカに渡り、プリンストン大学、ハーバード大学に学び、アメリカの市民権を取得。1967年からコロンビア大学準教授、1969年からは同教授。ビコや、フーコー、デリダ、ドルーズ(ドゥルーズ)らポスト構造主義者の影響下に批評活動を展開し、『始まりの現象――意図と方法』(1975)、『世界・テキスト・批評家』(1983)、『文化と帝国主義』(1993)などを発表した。
 サイードの名が世界的に知られるようになるのは1978年に発表した著書『オリエンタリズム』によってである。従来、東方趣味、東方研究、エキゾチシズム、といった「オリエンタリズム」の語義に、サイードのこの著書によって新しい意味が加えられた。すなわちオリエンタリズムとはヨーロッパ人が自らの文化的優位を示すために、ヨーロッパとは異なるものとしてオリエントを表象しようとしてつくりあげた観念であり、そこにはヨーロッパ中心主義が反映している、というのである。さらにサイードによれば、イスラムを対象とするオリエンタリズムは、ユダヤ人を対象とする反ユダヤ主義に似ているという。ヨーロッパ人が心に描くイスラム教徒、トルコ人、アラブの表象は、かつてヨーロッパ人にとってイスラムが象徴したきわめて危険な力を矮小化(わいしょうか)したものにほかならない。
 サイードのこの鋭い指摘は欧米の言論界、学界に広範な議論を巻き起こした。この書は新しいオリエンタリズム芸術研究が起こる引き金になったばかりでなく、ポスト植民地主義時代の多元的な文化論として、カルチュラル・スタディーズの一翼を担うものとして評価された。
 しかし、こうしてヨーロッパ人の優越意識に激しく抗議するサイードは、けっして特定の立場、イデオロギーを代表するものではない。サイードは自分の役割を知識人のそれと規定する。著書『知識人とは何か』(1994)によれば、知識人とは権力にへつらう堕落した専門家ではなく、権力に対して真実を語ることができるアマチュアであるべきであるとし、自ら言説をもってそれを実践しようとした。[久米 博]
『今沢紀子訳『オリエンタリズム』(1986/上下、1993・平凡社) ▽エドワード・W・サイード著、浅井信雄他訳『イスラム報道』(1986/増補版・2003・みすず書房) ▽山形和美他訳『始まりの現象――意図と方法』(1992・法政大学出版局) ▽山形和美訳『世界・テキスト・批評家』(1995・法政大学出版局) ▽大橋洋一訳『知識人とは何か』(1995・平凡社) ▽大橋洋一訳『文化と帝国主義』1、2(1998、2001・みすず書房) ▽エドワード・サイード著、中野真紀子訳『ペンと剣』(1998・クレイン/ちくま学芸文庫) ▽四方田犬彦訳『パレスチナへ帰る』(1999・作品社)』

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