デジタル大辞泉
「ドゥルーズ」の意味・読み・例文・類語
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ドゥルーズ
- ( Gilles Deleuze ジル━ ) フランスの哲学者。西洋の伝統的な形而上学の、階層的体系やロゴスを重視する思想を批判して、横断的につながるリゾームやノマドなどの概念を提示した。一般にはポスト構造主義者と目された。主著に「差異と反復」、精神医学者フェリックス=ガタリとの共著「アンチ‐オイディプス」「千のプラトー」など。(一九二五‐九五)
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ドゥルーズ
フランスの哲学者。パリ大学で哲学史を学ぶ。中世スコラ学,イギリス経験論,ベルグソン,ニーチェなどを考究し,近代理性主義哲学の同一性原理を克服する〈純粋差異〉の概念を確立する《差異と反復》(1968年)を著し,また現代におけるスピノザ復興を決定づけた《スピノザと表現の問題》(1968年),言語表現を意味と無意味の戯れる表層の世界として照明する《意味の論理学》(1969年)を発表。1968年ころよりフーコーとの交友を深め,以後政治行動を共にする。1970年パリ大学教授。1972年,五月革命後に知ったガタリと《アンチ・オイディプス》を共著,資本主義と精神分析の共謀による個の封じ込めを徹底的に摘出する。さらに1980年,再びガタリとの共著《千のプラトー》で,〈リゾーム〉〈器官なき身体〉〈ノマドロジー〉〈戦争機械〉といった概念を創出しつつ,資本主義による領土化に抗する欲望の唯物論的肯定を提示する。大学では映画を時間と運動の視点から分析して講義(《シネマ1・2》1983年,1985年),フーコーの死を悼んだ《フーコー》(1986年)はフーコー論の極致。大学を退いたあと三たびガタリと《哲学とは何か》(1991年)を共著,哲学を概念創出の学と位置づけつつ〈老い〉の哲学を肯定する。呼吸器疾患に苦しみ,自殺。他の著作に《ニーチェと哲学》《プルーストとシーニュ》《マゾッホとサド》《カフカ》《フランシス・ベーコン》《襞――ライプニッツとバロック》《消尽したもの》など。
→関連項目アルトー|構造主義|ブランショ|ベケット|ベーコン|ポスト構造主義|リオタール
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ドゥルーズ
Deleuze, Gilles
[生]1925.1.18. パリ
[没]1995.11.4. パリ
フランスの哲学者,思想家。 1970年以後パリ第8大学教授。 M.フーコー,J.ラカンらと並んで現代フランスの知的指導者の一人と目される。ニーチェの強い影響のもとに,B.スピノザ,L.ザッヒャー=マゾッホ,M.プルースト,L.キャロルらに関するきわめて多様な著作を通じて,差異の観念を発展させ,二元論的対立を克服して,開かれた動的な言葉そのもののうちに自己の思想を陳述し,強力な欲望と意味生産の概念に達している。『経験論と主観性』 Empirisme et subjectivité (1953) ,『ニーチェと哲学』 Nietzsche et la philosophie (1962) ,『マルセル・プルーストとシーニュ』 Marcel Proust et les signes (1964) ,『マゾッホとサド』 Présentation de Sacher Masoch (1967) ,『差異と反復』 Différence et répétition (1968) ,『アンチ・オイディプス』L'Anti-Œdipe (1972,『資本主義と精神分裂症』第1部,ガタリ Félix Guattariと共著) ,『千のプラトー』 Mille Plateaux (1980,ガタリと共著) など。
ドゥルーズ
Durüz; Druzes
中東各地に居住するイスラム教徒の一派。 11世紀前半に教師ドラジーがカイロで創唱した教理を信仰し,それがドゥルーズの名称ともなった。その教説はタキーヤ (神隠し) の説をもつところからイスマーイール派の一派ともされるが,メシア主義,グノーシス派,新プラトン主義などが折衷されている。ドゥルーズは十字軍への反抗,オスマン帝国時代の領臣としての活躍などで歴史にも名をとどめた。教派は2つに分れているが,教義は秘密となっており,その規律により帰属意識は強く,結束が固い。社会は伝統的な習慣を維持しているが,女性の地位は比較的高く,単婚が守られており,離婚もできる。禁欲,禁煙,禁酒は厳格に守られている。村落を形成し,主として農耕を行う。
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ドゥルーズ
Gilles Deleuze
生没年:1925-95
フランスの哲学者。ソルボンヌに学び,リヨン大学講師を経て1970年パリ第八大学教授となる。構造主義など60年代の西欧近代理性の再検討の思潮のなかで,深い哲学史研究を背景に,経験論と観念論という西欧の二大知的伝統の思考の基礎形態を批判的に解明して,これを克服する哲学を主著《差異と反復》(1968)で展開した。さらに進んで,ガタリF.Guattari(1930-92)と共同して,精神分析やマルクス主義の概念装置を統合的に援用しつつ,資本主義社会を根本的にとらえなおす試みを《反エディプス》(1972),《ミル・プラトー》(1980)などで行い,現代哲学に大きな影響を与えている。闘病生活のすえ,自殺。
執筆者:荒川 幾男
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世界大百科事典(旧版)内のドゥルーズの言及
【精神分析】より
… 一方,J.P.サルトルやM.メルロー・ポンティをはじめ現象学とマルクス主義を結合する実存主義の展開に続いて,人間の社会的活動を深層の意味構造から理解しようとする探求が生まれると,精神分析とフロイト主義は,言語学や人類学などと連動しつつ,無意識的な文化の構造を探り,人間認識の基本視座を革新する試みの思想的源泉の一つとなった。C.レビ・ストロース,M.フーコーらがそのような試みの代表者であるが,その後も思想のあらゆる分野でフロイトの新しい理解が新しい探求を触発しており,精神分析学者F.ガタリと共同する哲学者G.ドゥルーズの社会哲学的探求からJ.クリステバの記号論的探求やR.ジラールの象徴論的探求などにいたるまで,フロイトと精神分析の影響はいっそう深くひろがっている。[心理学][精神医学]【荒川 幾男】。…
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