シュードラカ
Śūdraka
インドの古典劇《ムリッチャカティカー(土の小車)》10幕の作者として知られているが,この作品の序幕でたたえられている伝説上のシュードラカ王とは別人とされる。あるいは,この戯曲の作者がシュードラカの名を自作に冠したとも考えられる。《ムリッチャカティカー》の年代はカーリダーサ以前であり,一般に350-400年ごろとみなされているが,より後代,7世紀に至るまでの時期に成立したとする説もある。この戯曲は,作者がバーサに帰せられる未完の戯曲《チャールダッタCārudatta》を完成させたもので,有徳の商人チャールダッタと高潔な遊女バサンタセーナーVasantasenāの恋愛を中心的な主題とするが,インド古典戯曲には珍しく,政治劇・社会劇の要素をも備えている。特に第9幕の法廷の場は名高く,そのほかにも文化史的に興味ある多くの内容を含んでいる。シュードラカはまた,《パドマ・プラーブリタカPadmaprābhṛtaka》という古いバーナbhāṇaと呼ばれる独白劇の著者であるとみなされている。
執筆者:上村 勝彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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シュードラカ
しゅーどらか
Śūdraka
生没年不詳。3世紀ごろ活躍した古代インドの劇作家。サンスクリット劇『ムリッチャカティカー』(土の小車)の作者といわれ、100歳の長寿を全うした学徳円満の王と伝えられる。10幕からなるこの劇は、ヒロインの名をとって『バサンタセーナー』ともよばれ、零落した商人と遊女の恋愛を主題とする。第4幕まではバーサの戯曲『チャールダッタ』をほとんどそのまま取り入れている。場面の多くは市井のできごとで変化に富み、登場人物も多く、悲劇・喜劇的要素を備え、二十数種のプラークリット語を使用した古典劇中特異の作品。
[田中於莵弥]
『岩本裕訳『世界文学大系4 インド集 土の小車』(1959・筑摩書房)』
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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世界大百科事典(旧版)内のシュードラカの言及
【インド演劇】より
…劇作家[バーサ](3世紀ころ)の名は古くから知られていたが,その作品と推測される13種の戯曲は1910年に南インドで発見された。バーサに次ぐ劇作家は[シュードラカ](4世紀)で,彼の作に帰せられる《ムリッチャカティカー(土の小車)》は,社会劇として古典劇中特異の地位を占めている。詩聖[カーリダーサ](4~5世紀)は傑作《シャクンタラー》劇によってインド劇の真価を世界に知らしめたが,彼はほかに2編の戯曲を残している。…
※「シュードラカ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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