改訂新版 世界大百科事典 の解説
ジャーディン・マセソン[会社]
Jardine, Matheson and Co., Ltd.
香港を拠点に中国貿易に携わった最大のイギリス資本商社。中国名は怡和(いわ)洋行,渣甸(さでん)洋行とも記される。スコットランド人W.ジャーディンとJ.マセソンは1832年(道光12)澳門(マカオ)に怡和洋行を設立し,アヘンや茶貿易に従事した。東インド会社の中国貿易独占権の廃止やアヘン戦争などを機に,広州,香港,上海に進出し,また横浜にも59年に支店を置き,デント商会倒産の後は極東最大の貿易商となった。さらに,運輸,保険,造船,埠頭,倉庫,製糸工場,公共事業,不動産などの諸事業を手がけ,中国政府への借款もおこなっている。98年(光緒24)には香港上海銀行と共同で中英公司(コンス)British and Chinese Corporationを組織し,京奉(京瀋,北京~瀋陽),滬寧(こねい)(上海~南京),広九(広州~九竜)その他の鉄道建設のための借款を行うなど,貿易のみならず,企業経営や投資活動を活発に進めた。第2次大戦後,1954年に中国から撤退し,香港を拠点にJardine,Matheson Holdings Ltd.の社名で,東南アジア,太平洋諸地域,南アフリカ,中東,アメリカの各地域に進出し,国際商社の地位を強めつつある。また,79年以降,北京,上海,広州に代表部を設けている。なお,84年に登記上の本社をバミューダに移した。
執筆者:浜下 武志
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報