改訂新版 世界大百科事典 「スカルド詩」の意味・わかりやすい解説
スカルド詩 (スカルドし)
古代北欧のスカルドskaldの韻律でつくられた詩。スカルドは,古代・中世北欧詩人の総称である。エッダ詩が名の知られぬ詩人による神話詩,英雄詩であるのにひきかえ,スカルド詩は多く詩人の名が知られ,内容は王侯や首長の武勲や事績をたたえたものである。形式の点から比較すると,エッダ詩の方が韻律は比較的自由で短行の終りにも制約なく,全体として厳かだが単純な形式をもつのに対して,スカルド詩は高度に複雑で技巧的な韻律をもち,末尾は必ずトロカイオス(強弱調)で終わる。その調べはエッダ詩の荘重に比し華麗である。そのうえケニングと呼ばれる換喩が多用され詩的形象の多彩を競う。スカルド詩は9世紀から10世紀前半が最盛期で,半ば伝説的なブラギやアイスランドの英雄詩人エギル・スカラグリームスソン,ノルウェーの王家に仕えたショーゾールブやシグファットらの頌歌や友情,恋,旅,嘲笑などを歌った即興詩が残されている。
執筆者:谷口 幸男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報