タイ代理出産騒動(読み)たいだいりしゅっさんそうどう

知恵蔵 「タイ代理出産騒動」の解説

タイ代理出産騒動

24歳の日本人男性が複数のタイ人女性に20人以上の子(未確認・妊娠中を含む)を代理出産させていたことが発覚し、世界中から注目が集まった騒動。2014年8月6日、タイの首都バンコクのマンションで9人の乳幼児が保護され、DNA鑑定の結果、全て同一の男性の子であることが明らかになった。東証1部上場企業のオーナー創業者の長男という日本人が、全て自分の子であることを認めている。その後、地元メディアは、男性が代理出産させた子の数は20人以上で、うち3人はカンボジアに出国したと伝えている。
この不可解な事件にタイ警察も捜査に乗り出したが、人身売買などの犯罪性は確認できなかった。しかしこれをきっかけに、タイ国内では母子の人権擁護や倫理観点などから、商業目的の代理出産の是非を問う議論も起こった。医療水準が高く、代理出産を規制する法律がないタイでは、数年前から外国人カップルを対象とした「代理出産ビジネス」が公然と行われてきた。タイ国民の間でも、不妊に悩む夫婦への福音として、代理出産を含む生殖補助医療への道義的抵抗は小さいともいわれる。しかし、この問題が発覚した同時期(14年8月)、タイ人代理母が出産したダウン症の子の引き取りを、依頼主のオーストラリア人夫婦が拒否したという疑惑が浮上し、国内外で代理出産への関心が高まっていた。現在(14年9月末時点)、タイ軍事政権は先進国並みの代理出産規制法の制定を進めている。

(大迫秀樹 フリー編集者/2014年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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