ある女性が別の人に子供を引き渡す目的で妊娠・出産することを指す。こうした出産に当たる女性を「代理母」と呼ぶ。病気などのため、子どもを産めない女性が依頼する場合が多いが、親になりたいと願う独身男性が第三者の女性に子どもを産んでもらうケースもある。多くは/(1)/夫の精子を代理母に注入し、代理母自身の卵子を使って妊娠してもらう/(2)/夫の精子と、妻や第三者の女性の卵子を体外で結合させて受精卵を作り、代理母に移植する―方法がある。(共同)
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出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報
生殖補助医療を用いて第三者の女性に妊娠し出産してもらい、生まれた子を引き取る行為。代理母、代理懐胎ともいう。
[橳島次郎 2022年6月22日]
用いられる生殖補助技術の組合せにより、代理出産には次のような類型がある。
(1)代理出産する女性に直接、依頼夫婦の夫の精子を人工授精する。
(2)依頼夫婦の精子と卵子を体外受精させた受精卵を代理出産女性の子宮に移植する。
(3)第三者の女性から提供された卵子と、依頼夫婦の夫の精子を体外受精させた受精卵を、代理出産女性の子宮に移植する。
かつては(1)の類型も行われていたが、現在は(2)または(3)の類型が一般的である。
代理出産を依頼する側、引き受ける側の類型もさまざまである。依頼する側では、不妊のカップルだけでなく、単身者や男性同性カップル、妊娠・出産の負担を避けたい便宜的な利用者などがある。引き受ける側では、親族の女性(依頼夫婦の妻の姉妹や母)、無償のボランティア、有償の契約で雇われる場合などがある。無報酬のボランティアにも妊娠中の生活保障や栄養費などが払われることがある。
[橳島次郎 2022年6月22日]
代理出産に対しては、それ以外の生殖補助医療では子をもてない不妊のカップルの最後の希望だと評価する意見と、女性の体を道具化し搾取するものだと非難する意見がある。ドイツやフランスなどは全面禁止しているが、イギリスのように無償のボランティアの場合のみ認める国や、アメリカのいくつかの州のように有償の契約を認めるところもある。ヨーロッパでは、ウクライナなどが有償の代理出産契約を条件付きで合法化しており、フランスなど自国では実施がむずかしい多くの国から顧客を集めている。日本では法的規制はなく、産科婦人科学会が会告で禁じているだけであるが、それに反し国内で実施を公表した産科医がいるほか、日本人依頼者がアメリカやインド、ウクライナ、東南アジアなどの規制の緩い国に渡航して行うケースも出ている。
代理出産は、親子・家族のあり方に大きな影響をもたらす。日本では、判例および2020年(令和2)公布の生殖補助医療親子関係特例法(正式名称「生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律」令和2年法律第76号)により、分娩(ぶんべん)女性を母とするというルールが確定しているので、代理出産によって生まれた子は、依頼夫婦が実子とすることはできず、養子縁組がなされる。それで当事者がすべて納得すれば問題は起こらないともいえるが、子の引渡しまたは受取りの拒否や、補償のあり方などについてトラブルが起こった場合、係争が生じ、生まれた子の福祉が損なわれる事態になりかねない。禁止か容認か、禁止の場合は違反したらだれを罰するのか(依頼者か引き受けた女性か実行した医師か)、容認の場合はどのような条件を課すかなど、公的なルールの確立が望まれる。
[橳島次郎 2022年6月22日]
『向井亜紀著『会いたかった――代理母出産という選択』(2004・幻冬舎)』▽『日比野由利著『ルポ生殖ビジネス 世界で「出産」はどう商品化されているか』(2015・朝日新聞出版)』
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