タティアノス(読み)たてぃあのす(その他表記)Tatianos

日本大百科全書(ニッポニカ) 「タティアノス」の意味・わかりやすい解説

タティアノス
たてぃあのす
Tatianos
(120ころ―?)

2世紀後半のキリスト教護教家。「アッシリアの地に」異教徒の家庭に生まれ、若き日にギリシア哲学、修辞学の教育を受けた。漂泊の旅の後、最後にローマでキリスト者になり、哲学者にして殉教者ユスティノスから「確実で有益な哲学」であるキリスト教を学び、当時の教養ある人々に対してキリスト教の真理を弁証する書物ギリシア人へのことばLogos pros Hellēnesを書いた(165ころ)。ほかに、四福音(ふくいん)書の記事から統一的な物語を編集した『ディアテッサロンDiatessaronもある。師ユスティノスの死後東方に帰って、異端的な傾向をもつ禁欲主義者としてシリア、キリキア方面で活動した。

[中沢宣夫 2015年1月20日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「タティアノス」の意味・わかりやすい解説

タティアノス
Tatianos
生没年:120ころ-?

シリア生れのキリスト教護教家。ユスティノス弟子ギリシア語による主著《ギリシア人への言葉》はギリシア文明を攻撃し,キリスト教の古さと純粋さを弁護したもの。また2世紀中葉に編集したシリア語による《ディアテッサロン》は新約の四福音書を一つの物語にまとめたもので,5世紀までシリアでひろく用いられた。のち172年ころ教会を去り,東方でエンクラディス派教団を創立し,グノーシス主義的傾向と極端な禁欲主義のため異端とされた。
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