チェリャビンスク隕石(読み)ちぇりゃびんすくいんせき

知恵蔵 「チェリャビンスク隕石」の解説

チェリャビンスク隕石

2013年2月15日、ロシア南部チェリャビンスク州周辺に落下した隕石
負傷者約1200人、窓ガラスの破損など被害建物は約3000棟で、隕石の落下によると原因が確定している中では、史上初の人的被害をもたらした。米航空宇宙局(NASA)によると、隕石の大気圏突入前の質量約1万トン、直径約17メートル。爆発のエネルギーの大きさは、TNT(高性能火薬)換算で約500キロトン、長崎型原爆の25個分と推定されている。
同月16日に、直径約45メートルの小惑星「2012DA14」が地球近くを通過したが、チェリャビンスク隕石とは無関係。2012DA14について軌道や地球接近時刻が予想されていたのと異なり、チェリャビンスク隕石は地球落下前の小惑星として全く検知されておらず、突然、大気圏に突入して地表に落下した。
大気圏突入前の推定速度は秒速18キロメートル、衝突角度は20度未満と推定されている。大気中の落下速度は秒速15キロメートル(マッハ44)で、隕石に前方から衝突する地球大気断熱圧縮によって非常な高温になるため、隕石の成分や周りの気体が燃焼し、火球として観測された。また、落下周辺地域では気温の上昇を感じた人もいた。その後、隕石が超音速で落下することにより生じた急激な大気の圧力変化は、空気中を衝撃波となって伝播(でんぱ)し、建物のガラスなどに激しい圧力変化を与えて大きな被害をもたらした。
隕石は、現地時間9時20分26秒、上空15キロメートルから50キロメートルで爆発し、複数の破片に分裂して落下した。目撃者や動画・写真を撮影した人も多く、多くの映像記録が残された。
落下後、州都チェリャビンスクの西約70キロメートルのチェバルクリ湖では、直径0.5~1.0センチメートルほどの黒くて硬い石のようなかけらが見つかった。ロシア科学アカデミーの専門家が発表した分析結果によると、約10%の金属鉄が含まれる石質隕石で、粒状の構造を持つ一般的な隕石という。2月24日には、同州エトクリ地区でチェリャビンスク隕石の一部とみられる1キログラムを超える塊が見つかった。これはこれまで発見された破片のうち最大となる。
チェリャビンスク隕石落下を受け、国連宇宙空間平和利用委員会は、地球に接近する小惑星などの早期発見や監視を行う国際小惑星警戒ネットワークの構築を提唱。13年内に国連総会で決議される見通し。

(葛西奈津子  フリーランスライター / 2013年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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