コンピュータが登場してまもないころ、多くの人が機械が知能をもつことはありえないと考えていた。これに反論するためにイギリスの数学者チューリングが提案した思考実験がこれである。
その実験では、まずテレタイプを2台用意する。1台はほかのテレタイプにつながっており、ほかの人間が座っている。もう1台はコンピュータに接続されていて、このコンピュータのプログラムは人間の反応をシミュレートするようにできている。そして、この2台のテレタイプのうち、どちらが人間でどちらがコンピュータかわからなければ、このコンピュータプログラムは知能をもっているとしてよいというものである。知能の有無をその表面的動作だけで判断しようとする立場である。
チューリングテストでは人間はどんな質問をしてもよい。詩をつくらせてもよいし、文学作品の感想を聞いてもよい。プログラムのほうも、人間をまねるためにあらゆる努力をする。たとえば計算問題に関しては、時間をかけたり、ときどき計算を間違えたりするわけである。
ありとあらゆることが可能であるが、テレタイプの交信に限定されているところがみそである。そうでなければ身体的な見かけや動き方で、どちらが人間か、すぐにわかってしまうからである。
[中島秀之 2019年8月20日]
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